生命保険の中でも、終身保険とはどういった保険なのでしょうか。終身保険は一生涯保障が続いて、解約時には解約返戻金が支払われる貯蓄性のある保険です。終身保険の特徴やメリットとデメリット、選び方などについて解説していきます。
目次
終身保険とは?
終身保険にはどういった特徴があるのか、また、定期保険との違いにも触れていきます。
保障が一生涯続き貯蓄性がある
終身保険は保障が一生涯続くため、死亡保険金、あるいは、高度障害保険金を必ずもらえる保険です。解約した場合には、解約返戻金を受け取ることができます。解約返戻金の返戻率は加入し始めたばかりの頃は低いですが、保険料払込期間が終わるタイミングからは、払込済み保険料を上回る商品が多いです。
一般的な終身保険は、保障も一生涯一定となっています。終身保険は万が一に備えながら、貯蓄を兼ねることができる保険なのです。
4種類の保険料の支払い方法
終身保険の支払い方法には、一回で支払う一時払い、年払い、月払いのほか、全期前納払いがあります。全期前納払いは保険料を一回で支払うのは一時払いと同じですが、保険会社が預かって年払いや月払いとして、保険料に充当されていく点が異なります。
たとえば、30歳で終身保険に入ったとき、40歳で亡くなった場合、一時払いでは死亡保険金のみが支払われます。一方、30歳で終身保険に入り、60歳までを保険料払込期間としていて、40歳で亡くなった場合には、死亡保険金が支払われるとともに、60歳までの20年分の保険料も返還されるのです。
終身保険の保険料払込期間は、10年や15年、20年、あるいは、60歳や65歳までといった形で自由に設定できることが一般的ですが、保険会社によって異なります。
定期保険との比較
定期保険は保険期間が決められ、一般的な商品には解約返戻金がない、掛け捨てといわれる保険です。終身保険は必ず死亡保険金、あるいは、高度障害保険金を受け取ることができるのに対して、定期保険は保険期間中に万が一のことが起こらず、無事に過ごせた場合は保険金を受け取ることはできません。
終身保険よりも定期保険の方が保険料は割安ですが、更新型の定期保険は更新の度に保険料が上がっていきます。更新型の定期保険と終身保険を比較して検討するときには、終身保険の総払込保険料と定期保険の更新を繰り返した場合の総払込保険料をシミュレーションし、比較しましょう。
また、終身保険は一生涯保障が続きますが、定期保険は更新ができる年齢の上限が決められていることがほとんどですので、一生涯保障を受けることができないことも異なる点です。
こちらの記事では基本的な解約返戻金の紹介や解約返戻金をより多く受け取る方法についてご紹介しています。参考にしてみてください。
終身保険のメリットとは
終身保険への加入には、どのようなメリットがあるのかみていきましょう。
必ず保険金がもらえる
定期保険は更新できる年齢に上限がありますが、終身保険は死亡保障が一生涯続くため、長生きをするリスクにも備えられます。終身保険は死亡保険金、または高度障害保険金を必ず受け取ることができることがメリットです。家族に払込済み保険料を上回る保険金を残すことができますので、払い込んだお金が戻ってくるようなものです。定期保険や収入保障保険は掛け捨てですので、保険期間中に万が一のことが起きなければ、保険金を受け取ることはできません。
万が一に備えながら資産形成が可能
終身保険は保険料払込期間が終わるくらいのタイミングで、解約返戻金が払込済み保険料を上回ることから、実質0円で死亡保障を備えられることになります。終身保険を活用すると、万が一に備えながら、まとまったお金をつくることができることがメリットです。終身保険の中にはハイリスクハイリターンですが、資産運用に向いた保険もあります。
また、子どもが大学へ進学するタイミングで保険料払込期間が終わるようにすると、学資保険代わりに活用することが可能です。退職するタイミングで解約し、老後資金に充てるといった使い方もあります。
相続税対策ができる
相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。生命保険の死亡保険金は相続財産ではないものの、相続税の課税対象ですが。「500万円×法定相続人」の別枠の非課税枠があるため、相続税対策に活用できます。
生命保険の中でも相続税対策として向いているのは、保障が一生涯続いて、必ず死亡保険金が受け取れる終身保険です。現金などで保有している資産で終身保険に加入すると、法定相続人が4人いる場合は、2,000万円まで非課税で相続できる枠が増えることになります。
また、相続税の納税資金として現金を用意しておく手段としても有効です。さらに、自宅が遺産のほとんどを占めるケースなどで、遺産分割でもめないように、遺留分を生命保険で用意しておくといった活用方法もあります。
ただし、契約形態によって死亡保険金に課税される税金は異なり、相続税が適用されるのは、被保険者と保険契約者が同一で、保険金受取人が別のケースです。被保険者と保険契約者、保険金受取人がそれぞれ異なる場合は贈与税、保険契約者と保険金受取人が同一の場合は所得税が課税されます。
終身保険のデメリットとは
終身保険は大きなメリットがありますが、一方でデメリットもいくつか挙げられます。
保険料が割高
終身保険は一生涯を保障し、掛け捨てではないため、同じ額の死亡保障を用意する場合、定期保険よりも高くなります。そのため、必要な保障をすべて終身保険でカバーするのは難しいケースが少なくありません。
そこで、終身保険と定期保険を併用する方法があります。終身保険をベースに、子どもが独立するまでの間など手厚い保障が欲しい期間は、定期保険と併用することで保険料を抑えつつ、一生涯の保障を手に入れることができます。また、保険料を抑えたい場合には、後述する低解約返戻金型終身保険を選ぶことも選択肢のひとつです。
生命保険の見直しがしにくい
終身保険は解約時に解約返戻金が受け取れることもメリットですが、早期に解約する場合は返戻率が低く、払込済み保険料を下回ることがほとんどです。一般的には払込済み保険料を解約返戻金が上回るのは、保険料払込期間が終わるくらいのタイミングになります。
定期保険は決められた保険期間に対して保険料を払う掛け捨ての保険ですので、条件のよい商品を見つけたり、家計や家族の状況の変化があったりしたときに、解約がしやすいです。
終身保険は早期の解約は損をするため、生命保険の見直しがしにくいこともデメリットといえます。
終身保険の種類とは?
一般的な終身保険のほかに、どのような種類があるのかみていきましょう。
低解約返戻金型終身保険
低解約返戻金型終身保険は、一般的な終身保険よりも保険料を払い込み終わるまでの解約返戻金の返戻率を低くすることで、保険料を抑えている終身保険です。保険料を払い込み終わるまでの返戻率は一般的な終身保険の7割程度ですが、保険料払込期間が終わると返戻率が大幅にアップします。
保険料払込期間が終わるまでは解約しないことを前提にする場合は、低解約返戻金型終身保険の方が有利です。しかし、途中解約した場合の返戻金が少なく、早期に解約した場合は大きく損をすることから、一般的な終身保険よりもさらに保険の見直しがしにくい面があります。
外貨建て終身保険
外貨建て終身保険は、終身保険の仕組み自体は変わりませんが、外貨で運用される保険で、保険料の支払いや保険金、解約返戻金の受け取りも外貨で行われます。外貨建て保険で運用される通貨は、米ドルやユーロ、豪ドルが中心です。
日本円は低金利が続いていますので、金利の高い外貨で運用するため、予定利率が日本の一般的な終身保険よりも高いですが、為替変動によるリスクもあります。たとえば、保険料が毎月100ドルの場合、1ドル100円であれば1万円ですが、1ドル110円になると1万1,000円になります。また、30万ドルの保険金が受け取れる場合、1ドル100円のときは3,000万円ですが、1ドル90円だと2,700万円、1ドル110円の場合は3,300万円です。
外貨建て終身保険は加入時よりも、円安に向かっていく状況の場合に有利です。外貨建て終身保険は、為替リスクも踏まえて検討しましょう。
積立利率変動型終身保険
一般的な終身保険は加入時に予定利率が決められているため、受け取れる保険金の額は決まっています。積立利率変動型終身保険は、市場の金利から積立利率が変動するため、保険金や解約返戻金の金額が変動する終身保険です。ただし、最低保証の積立利率は決められていて、それを下回ることはありません。
景気が良くなり金利が上昇するとモノの値段も上がるため、積立利率変動型終身保険はインフレに対応できることがメリットです。最低保証の積立利率が決められていることから、金利の低下によるリスクは抑えられます。
ただし、積立利率変動型終身保険は一般的な終身保険よりも保険料が高いこと、最低保証の積立利率は一般的な終身保険よりも低いことがデメリットです。積立利率変動型終身保険は、これから景気がよくなると思われるタイミングでの加入が向いている保険です。
変額終身保険
変額終身保険は運用実績によって、保険金や解約返戻金が変動するタイプの終身保険です。保険料の一部が特別勘定という枠に入れられ、契約者が世界株式型や国内株式型、バランス型なといったファンドへの組み入れ比率を選び、投資信託で運用していきます。変額終身保険の保険料は、一般的な終身保険よりも割安です。
変額終身保険は、保険金には最低保障がありますが、解約返戻金には最低保障はありません。運用実績がよければ保険金や解約返戻金が払込済み保険料を大きく上回って戻ります。一方、運用実績が悪い場合は、保険金は最低保障での支払いとなり、保険料払込期間が終わった後のタイミングでの解約でも、解約返戻金が払込済み保険料を下回る可能性があります。
タイプ別おすすめの終身保険の選び方
終身保険はどのように選べばよいのか、状況や加入する目的などタイプ別にみていきましょう。
保険料を安く抑えたい
終身保険への加入で保険料を安く抑えたい場合は、低解約返戻金型終身保険がおすすめです。一般的な終身保険と同じ死亡保障をつけても、保険料を安く抑えることができます。
ただし、低解約返戻金型終身保険は、保険料払込期間が終わるまでの解約返戻金の返戻率は低く抑えられていますので、家計の急変によって早期に解約すると、解約返戻金が大幅に元本割れしてしまいます。
低解約返戻金型終身保険は、無理なく保険料を払うことができる保険金額を設定することが大切です。大きな保障が欲しい場合は、保障を手厚くしたい期間は定期保険と併用することを検討してみましょう。
資産運用の手段としたい
資産運用の手段として終身保険への加入を検討している場合は、外貨建て終身保険や変額終身保険が向いています。
外貨建て終身保険は日本円よりも金利が高い外貨で運用されるため、大きなリターンを期待できます。また、為替変動によって円ベースで保険金が増えることも減ることもあるため、ハイリスクハイリターンです。外貨建て終身保険は、円以外の投資先として分散投資したい人、為替に関する知識のある人などに向いた投資手法です。
変額終身保険は、実質的に契約者が投資信託で運用しているようなものですので、株式や投資信託への投資経験のある人が向いています。ただし、単純に資産を増やしたいのであれば、直接、投資信託を運用した方が手数料の面で有利です。変額終身保険は資産運用をしつつ、死亡保障も兼ねたい人におすすめです。
相続税対策をしたい
相続税対策で終身保険に入る場合に向いているのは、保険料を1回で支払う一時払い終身保険です。生命保険の加入は告知や健康診査が必要になりますが、一時払い終身保険は職業告知だけで済むなど告知が簡単な商品や告知が不要な商品が少なくありません。また、一時払いにすることで、保険料が割安になります。
ただし、一時払い終身保険の場合、加入から数年間の解約は、解約返戻金が払込済み保険料を下回ってしまいます。一時払い終身保険には、余裕資金を充てるようにしましょう。
死亡整理金として残したい
独身者は、大きな保障は必要ありませんが、死亡整理金として、葬式代やお墓の費用、住居を引き払う費用などを用意しておくと、万が一の際に親や兄弟姉妹に迷惑をかけずに済みます。
死亡整理金としての終身保険は、300万円から生命保険の法定相続人1人あたりの非課税枠の500万円までの金額が目安です。500万円の生命保険に加入して一生涯の保障を用意しておき、もし、結婚をしたり、子どもができたりした場合は、定期保険にも加入して補うとよいでしょう。
まとめ
終身保険は、一生涯保障が続いて、必ず保険金が受け取れることがメリットです。払込済み保険料上回る保険金を受け取ることができるので、実質的にはタダで万が一に備えることができます。ただし、保険料が高いため、低解約返戻金型終身保険を選んだり、定期保険と併用したりすることを検討してみましょう。