生命保険は、命にかかわることがあったときに備える保険ですが、仮に被保険者が自殺した場合はどうなるのでしょう?タブーとされることが多い話題かもしれませんが、現代の日本社会においては少なくない出来事であり、急増が問題となった地方もあります。この記事では、自殺に関する規定や法律、保険金支払いの条件などについて紹介します。
目次
自殺に関する規定とは?
自殺に関する生命保険の規定については、法律がベースとなります。しかし、法律には専門的な記述も多く、わかりにくい部分もあります。そこで、各生命保険会社の約款をあわせて確認してみましょう。法律と約款では、規定にどのような違いがあるのでしょうか。
保険法による規定
生命保険と自殺に関しては、保険法51条1号によって定められています。内容は「被保険者の自殺に関しては、保険会社に保険金給付の責任はない」というものです。
なぜこのような法律が定められているのかというと、保険金目的での自殺を抑制するためというのが理由のひとつといえます。保険法だけをみると、自殺によって生命保険はおりないと解釈することもできます。
生命保険会社の約款による規定
保険法がベースにされているとはいえ、自殺に関する生命保険上の取り扱いは、各社が定めた約款が優先されることとなります。生命保険会社ごとに内容は異なりますが、保険法とは違い、自殺による免責(保険金を支払わなくても良いとすること)が全面的に設けられているわけではありません。
中には契約から一定の年月のみを免責期間とし、一部の自殺については保険金の支払いを認めている生命保険もあります。生命保険会社によっては、自殺によって死亡したすべての場合に生命保険金が支払われないわけではないということがわかります。
自殺で生命保険金がおりる条件とは?
生命保険の加入申込書へ記名捺印を行った責任開始日から2~3年の間を免責期間、つまり自殺を理由に保険金がおりない期間とする生命保険会社は少なくありません。免責期間以外の要素として、自殺で生命保険金が支払われるには以下のような条件があります。
保険金が目的ではないこと
まず、保険金を目的とした自殺ではないと考えられるときが挙げられます。そもそも、保険法は「保険金の受け取りを目的とした自殺を抑制する」という目的で設けられているため、保険金のための自殺ではないと証明することが必要です。
たとえば人間関係に悩みがあった・精神的に深いダメージがあったなどという理由であれば、保険金が目的の自殺とみなされないことがあります。死因が自殺であっても、保険金が支払われる可能性は低いものではありません。
意思能力がないこと
自殺した本人に意思能力がない場合も、生命保険金の支払い対象となる場合があります。「意思能力がない」というのは、うつ病や精神疾患などで正常な判断力がないとされるケースです。意思能力が喪失した状態での自殺は計画的なものとはみなされず、保険金を目的とした自殺にも該当しないと考えられ、保険金が支払われることがあります。
しかし、保険金目的であったか、意思能力があったかなどの点については容易に判定できるものではなく、第三者の判断が必要になります。客観的な判断のために重要なのが、遺族や知人による立証です。
たとえば、保険金を目的とした自殺でないことを証明するには、人間関係に関する周囲の証言、労働時間・労働条件などがわかる資料、遺書の有無などが材料として考えられます。意思能力がないと判断される場合、病院のカルテなども参照されることがあります。
保険金が支払われない自殺とは?
自殺が理由であっても生命保険金が支払われる例が見られる一方、支払いが受けられない場合もあります。それぞれどのような要因によるものなのか、4つのケースを確認してみましょう。
免責期間内の自殺であった場合
契約の履行から2~3年以内の期間については、約款へ免責期間と定められている生命保険会社が多いことはすでに紹介しました。各社の定める免責期間内に自殺があった場合、保険金は原則として支払われません。保険会社によって設定期間は異なり、自殺以外の事由について免責期間が定められている場合もあります。加入前には確認しておきたいポイントといえます。
保険金目的の自殺であった場合
たとえば、多額の借金があった人が多額の生命保険をかけて自殺した場合などは、保険金が目的とされても致し方ないものと考えられます。保険は相互扶助の精神で成り立っているものであり、特に故意と思われる自殺については保険金支払いの及ぶところではないとされています。そのため、この例のように保険金が目的と思われる自殺については支払いの対象とならないケースがほとんどです。
告知義務違反が確認された場合
生命保険へ加入する際には、健康状態や通院歴・手術歴などを嘘偽りなく告知する義務があります。しかし、重度の病にかかっているにもかかわらず、病気を隠して生命保険へ加入し、さらに病気を苦に自殺したような場合については「告知義務違反」とみなされ、保険金の支払いを受けることは基本的にできません。
犯罪に関与していた場合
違法薬物に手を染めた上での自殺など、犯罪にかかわるような内容が確認された場合、保険金目的かどうかという点や意思能力の有無によらず保険金が支払われないことがあります。それほど多いケースではありませんが、遺体から薬物が検出されたり、犯罪に関与していたことが記された遺書が発見されたりして発覚することもあります。
まとめ
自殺だからといって、生命保険金が支払われないとは限りません。しかし、保険金が支払われるにはいくつかの条件があります。法律や約款の内容が自殺の抑止力になっているという点もあわせて理解し、生命保険へは本来の目的で加入するようにしましょう。