生命保険には種類がありますが、定期保険はどういったタイプの保険なのでしょうか。終身保険との違いを解説するとともに、定期保険のメリット、デメリット、定期保険への加入が向いている人などについてまとめました。
目次
定期保険とは
定期保険とはどういった保険なのか、一般的な定義や終身保険との違いについてみていきます。
保険期間だけ保障があり掛け捨て
生命保険の定期保険は、設定した保険期間中のみ死亡や高度障害が保障され、保険料が変わらない保険です。一般的な定期保険には解約返戻金はなく、通常、掛け捨てになります。
定期保険には、設定した保険期間を更新するたびに保険料が上がっていく更新型と、保険期間の終了時に保険契約が終了する全期型があり、全期型は長期の保険契約が中心です。同じ期間、同じ保障を備える場合は、当初の保険料は更新型の方が安いですが更新のたびに保険料が上がってしまいますので、トータルの保険料は全期間型の方が安くなります。
また、全期間型は若いときに年齢を重ねた後の分の保険料の一部を支払っているようなものですので、解約するタイミングによっては解約返戻金が支払われることもあります。更新型は保障内容の見直しをしやすいことがメリットです。定期保険の保険期間をみていくと、5年や10年、20年といった年単位で設定する年満了型と、60歳や65歳といった年齢で設定する歳満了型があります。
終身保険との違い
終身保険は保険期間が決められている定期保険と異なり、保障が一生涯続き、保険料が一定で、解約した場合には解約返戻金が支払われるのが特徴です。保険料の支払い方法には一時払い、60歳や65歳といった年齢までの有期払い、終身払いがあります。
死亡保険金、あるいは高度障害保険金が必ず支払われ、一般的には保険料払込期間が終わる少し前のタイミングで解約返戻金が払込済み保険料を上回ることから、貯蓄性がある保険です。ただし、終身保険の保険料は定期保険よりも割高になります。そのため、終身保険を主契約とし、特約として定期保険をつけて、子育て中など一部の期間の保障を手厚くする方法もあります
定期保険の種類
一般的な定期保険のほかに、どんな種類があるのかみていきましょう。
長期平準定期保険
一般的な定期保険は、保険期間中の保障が一定である平準型といわれるものです。平準型の定期保険の中でも、95歳満期や100歳満期など特に保険期間が長いものを長期平準定期保険といいます。
長期平準定期保険は法人向けの保険で、保険料の1/2を損金処理することが可能です。税法上の長期平準定期保険は、加入時の被保険者の年齢が70歳を超える、「加入時の被保険者の年齢+保険期間×2」が105歳を超える、また、逓増定期保険に該当しないという規定があります。
長期平準定期保険は解約返戻金があるのが特徴で、商品によって異なりますが、20~30年程度保険料を支払うと払込済み保険料を解約返戻金が上回るケースが多いです。そのため、長期平準定期保険は万が一の際の資金繰りに役立てたり、役員の退職金の原資として活用されたりしています。
逓増定期保険
逓増定期保険も法人向けの保険ですが、保険期間中に保障が最大で5倍まで増えていくのが特徴です。損金として処理できる保険料の割合は、被保険者の年齢や保険期間によって異なり、全額または1/2、1/3のいずれかです。
逓増定期保険の解約返戻金の返戻率は加入年数の経過ごとに徐々に上がっていき、ピークを迎えると徐々に下がり、満期を迎えるとゼロになります。そのため、経営者に万が一のことが起きたときに備えるとともに、ピーク時に解約して役員の退職金に充てるといったように活用ができます。
逓減定期保険
逓減定期保険は保険期間の経過とともに、保障が少なくなっていくタイプの定期保険です。逓減率は商品や設定の仕方で変わっていきますが、たとえば、毎年3%といった形で決まった割合で保険金額が下がっていきます。
保障が減っていくため、一般的な定期保険よりも保険料を安く抑えることができます。子育て中の場合、万が一の際に必要になるお金は、子どもの成長とともに減っていきますので、逓減定期保険は必要な保障を無駄なく備えられる合理的な保険といえるでしょう。
収入保障保険と逓減定期保険の比較
また、逓減定期保険と比較されることの多い保険に、収入保障保険があります。収入保障保険は生命保険のひとつで、万が一の際に支払われる保険金は、年金方式で残りの加入期間の間、受け取るものです。遺族の希望によって一括で受け取ることもできますが、年金方式よりも受け取れる保険金は少なくなります。
たとえば、年金が月10万円で保険期間が30年間の契約の場合、保険期間が20年残っている場合は、受取総額は2,400万円です。一方、残りの保険期間が10年の場合の受取総額は1,200万円になります。
逓減定期保険と収入保障保険は、保険金の受け取り方は異なりますが、年数の経過とともに保障が減っていくこという点では似ています。保険料は、逓減定期保険よりも収入保障保険の方が割安です。ただし、被保険者と契約者が同じ場合、逓減定期保険の保険金にかかる税金は相続税の対象ですが、収入保障保険を年金方式で受け取る場合、1年目は相続税、2年目以降は雑所得として所得税の対象となる点に注意しましょう。
定期保険のメリット
定期保険にはどのようなメリットがあるのでしょうか。定期保険の特徴をもとに、定期保険のメリットをみていきます。
割安な保険料で大きな保障
一家の大黒柱となっている人が、万が一の際に必要な保障をカバーできる終身保険に加入するのは、保険料の高さから難しいケースが少なくありません。定期保険は基本的に掛け捨てですので、終身保険や養老保険よりも割安な保険料が設定されています。
家計の負担となる額の生命保険料を払い続けることは、家計にとってリスクとなり、解約せざるを得ないケースも考えられます。定期保険は保険料が安いことから、死亡や高度障害に対して、大きな保障を無理なく備えられることがメリットです。
臨機応変に保険プランを変えやすい
終身保険は加入からの期間が短いときに解約すると、解約返戻金の返戻率が低く、払込済み保険料を大きく下回ってしなうため、保険の見直しがしにくいです。一方、定期保険は家計や家族の状況に合わせて、保険内容を見直したり、ほかの保険に乗り換えたりするなど、臨機応変に対応しやすいこともメリットに挙げられます。
たとえば、住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合は、通常、団体信用生命保険に加入するため、万が一の際には住宅ローンの負担がなくなります。住居費に対する備えがほとんど不要となりますので、生命保険を見直すべきタイミングです。
また、更新型の定期保険は、更新のたびに保険料は上がっていきます。しかし、子どもの成長に従って必要な保障は少なくなっていきますので、保障を小さくすることで更新による保険料の上昇を抑えることが可能です。
こちらは定期保険のメリットや種類について深堀りされた記事になりますので、併せてチェックしてみてください。
定期保険のデメリット
保険料が割安な定期保険ですが、一方で、掛け捨てで保険期間が決められていることから、デメリットもあります。
解約返戻金や満期保険金がない
一般的な定期保険は解約返戻金がないため、更新を繰り返して長期にわたって保険料を支払っていたとしても、解約返戻金として戻ってくるお金はありません。全期型の定期保険では若いうちに解約した場合には、解約返戻金が支払われることもありますがわずかです。
また、定期保険は、養老保険のように満期を迎えた際の満期保険金の支払いもありません。一般的な定期保険は、掛け捨てで保険料は割安ですが貯蓄性がなく、何事もなく無事満期を迎えた際には、保険金をもらわずに終わることがデメリットに挙げられます。
保障が一生涯ではない
定期保険は契約した保険期間のみ保障を受けられる保険ですので、保険期間を1日でも過ぎてしまうと、1円も保険金を受け取ることができません。更新型の定期保険は、契約満了時に自動更新によって新たな保険期間が設定されますが、更新のたびに保険料が上がっていきます。
また、更新は終身可能なわけではなく、商品に更新できる上限の年齢が決められていて、商品によって異なります。定期保険は、一生涯の保障を受けられないこともデメリットです。
定期保険が向いている人
定期保険は掛け捨てですが、割安な保険料で大きな保障をカバーできるのが特徴です。定期保険への加入はどのような人に向いているのでしょうか。
小さい子供がいる専業主婦
収入のない専業主婦には生命保険は不要と思われがちですが、小さな子どもを育てている場合、万が一の際には子育てに影響をきたします。専業主婦が亡くなることで、保育園代やベビーシッター代が必要になったり、外食や中食の購入が増えて、食費がアップしたりすることが考えられます。
小さい子供がいる専業主婦は、子どもが小学校を卒業するまでの期間を目安に、10年や15年といった期間の定期保険に加入しておくことがおすすめです。
子どもがいる一家の大黒柱
子どもが小さい家庭で一家の大黒柱として働いている人は、万が一、亡くなってしまうと、家計が困窮してしまいます。遺族年金も支給されますが、残された家族の住居費や生活費、子どもの教育資金など、必要な保障を終身保険でカバーしようとすると高額な保険料になります。
そこで、定期保険で万が一に備えることで、割安な保険料で大きな保障を備えておくことが可能です。また、逓減型定期保険を選択すると、保険料を抑えて必要な保障を効率よく準備できます。
葬儀費用を準備しておきたい人
独身の人など、扶養家族がいない人は生命保険で大きな保障つけておく必要はありません。しかし、万が一の際に残された遺族の負担とならないように、葬儀費用やお墓の費用、生活用品などの処分費用として、死亡整理金を用意しておくことが望ましいです。
死亡保険金の目安はお墓がある場合は200万~300万円、お墓をつくる場合は500万円が目安です。死亡整理金に充てる貯蓄がない場合は、保険料が割安な定期保険を利用する方法もあります。
一定期間だけ保障を手厚くしたい人
定期保険には、終身保険との併用や終身保険の特約としてつけるといった活用方法もあります。終身保険に加入している人や終身保険への加入を検討している人が、一時期だけ保障を手厚くしたい場合には、定期保険を活用することで、保険料を抑えて必要な保障を備えることが可能です。
たとえば、2人目の子どもが生まれたので大学卒業までの保障を増やしたい、脱サラして起業したので貯蓄が貯められるまで保障を手厚くしたいといったケースが考えられます。
定期保険の選び方のコツ
定期保険はどのように選んだらよいのか、更新型と全期型、平準型と逓減型を比較してみました。
更新型と全期型
若い頃に生命保険に加入し、できるだけ保険料を抑えたい場合には、更新型が向いています。更新型は更新のたびに保険料が上がっていきますが、貯蓄を増やすことができれば、保障を減らすことができますし、収入が増えていれば保険料が上がっても無理なく支払うことがあります。
ただし、保障を受けたい期間が決まっている場合は、全期型の方が保険料の総額の面では有利です。家計にゆとりがあれば、全期型を選ぶことを検討してみましょう。
平準型と逓減型
一般的な定期保険である平準型は保障が一定なのに対して、逓減型定期保険は保障が、毎年、一定の割合で減っていくタイプの保険です。大きな保障があった方が安心な面もありますが、子育て中の人の場合、子どもが独立するまでの生活費や教育費の総額は徐々に減っていきます。
保険料を抑えて、その時々に必要な保障を用意しておくには、平準型よりも逓減型の王が効率がよいのです。保険期間中に必要となる保障が減っていく場合は逓減型、必要な保障が変わらない場合は平準型が有利なのです。
割安な保険料の定期保険とは?
定期保険の保険料を抑えたいときは、最近増えている「リスク細分型」の保険が選択肢になります。適用条件に合致すると、割安な保険料で加入することができます。
健康な人はリスク細分型が選択肢に
リスク細分型保険とは、喫煙していない、身長と体重の割合であるBMIや血圧が所定の範囲内など、健康で保険金の支払いのリスクの低い人に対して、割り引いた保険料率を適用するものです。保険会社や商品によってリスク細分型の項目など適用条件には違いがあります。
リスク細分型保険の商品は、定期保険をはじめ、収入保障保険や医療保険で打ち出されています。たばこを吸わず、BMIや血圧が正常の範囲内の人は、保険料を抑えるために、リスク細分型保険を選ぶことも選択肢になるでしょう。
まとめ
定期保険は解約返戻金や満期保険金がない掛け捨ての保険ですが、割安な保険料で大きな保障を用意することができるという点ではお得です。保険料が家計を圧迫してしまい、立ち行かなくなるのでは元も子もありません。保険料を抑えて万が一の事態に備えたい人は、定期保険の活用を検討してみましょう。