がんは2人に1人がかかる病気といわれていますが、がん保険に入る必要はあるのでしょうか。がんの治療で先進医療を受けると、高額な医療費が発生します。そもそもがん保険とは何か、がん保険で受けられる保障などを解説したうえで、がん保険に入る必要性について考えていきます。
目次
がん保険とは
がん保険とはどのような保険なのか、一般的な定義や特徴をみていきましょう。
がん専門の手厚い保険
がん保険は、がんにかかったときのみ給付金が支払われるがん専門の保険です。ほかの病気やケガで入院することがあっても、医療保険と異なり、給付金は支給されません。がんと診断されたときをはじめ、がんで入院や手術をするとき、がんで通院治療をするときなどに、給付金を受け取ることができます。がん保険の入院給付金は、基本的に入院日数が無制限であるなど、がんに対して手厚い保障を受けられるのが特徴です。
ただし、がん保険には待機期間や不填補期間などと呼ばれる待ち期間が、3カ月間あります。医療保険は契約が完了すると、すぐに保障を受けることができますが、がん保険は契約の完了から3カ月後が責任開始日になります。がんと診断されてから、がん保険に入ることを回避するためのものです。そのため、契約完了から3カ月以内にがんと診断されても、保障を受けられない点に注意が必要です。
医療保険のがん特約との比較
がんに対する備えを準備するには、がん保険へ入る方法のほかに、医療保険にがん特約をつける方法があります。保険料は医療保険に特約をつける方が、医療保険とがん保険の両方に入るよりも割安ですが、保障内容は一般的にがん保険の方が充実しています。
医療保険のがん特約では、がんと診断されたときに診断給付金が受けられたり、がんでの入院に日数が無制限になったりするといったものです。また、商品によってはがんのみの特約は選べず、三大疾病に対する備えになります。
がん保険の保障の種類や給付の条件
がん保険ではどういった保障が受けられるのか、一般的な給付金や特約の種類や給付を受けられる条件などをまとめました。
診断給付金
診断給付金は、がんと診断されたときに受け取ることができる給付金です。診断給付金は50万円や100万円と設定している商品が多く、設定されたお金を受け取ることができます。
がんになる手前の上皮内新生物の診断を受けたときの扱いは、商品によって違いがあります。上皮内新生物はがん細胞が粘膜内にとどまり、基底膜を超えて浸潤していない状態です。上皮内新生物は適切な治療を行なえば、転移することはほとんどありません。がんと呼ばれているのは悪性新生物で、基底膜を超えてほかの組織にまで浸潤が進んでいる状態になります。
上皮内新生物と診断された際の診断給付金の取り扱いは、がんと同様に通常の診断給付金がでるケース、5万円や10万円程度に給付額を制限しているケース、支給の対象外とするケースのいずれかです。
また、診断給付金は、初めてがんと診断されたときのみ給付の対象となる商品のほか、治療後一定の年数を経過すると、再び給付の対象になる商品もあります。
入院給付金
入院給付金は、がんの治療を受けるために入院したときに受け取れる給付金です。医療保険の入院給付金は、1回の入院あたり60日や120日までといった限度日数があります。また、保険期間を通じて給付が受けられる通算支払限度日数も、1000日や1095日といった形で給付制限が設けられています。
これに対して、がん保険の入院給付金は1回の入院限度日数も通算支払限度日数もないのが一般的です。がん保険に入ると、長期の入院になっても安心して治療が受けられます。がん保険の入院給付金は、日額1万円や2万円という商品が多いです。
手術給付金
手術給付金は、がんの治療のために所定の手術を受けた場合に受け取れる給付金で、何度でも受け取ることができる商品がほとんどです。手術給付金は、1回の手術につき10万円や20万円と設定されているケースと、入院給付金日額に対して10倍や20倍、40倍といった倍数で設定されているケースがあり、商品によります。
また、対象となる手術の範囲は、日帰り入院も含む商品もあれば、1日以上の入院を条件とする商品もありますので確認しましょう。
通院給付金
通院給付金は、がんの治療のために通院したときの給付金です。通院給付金は、がんの治療のための入院前後の通院であることが給付の条件であることが一般的でしたが、昨今では入院を条件とせず、通院のみの治療でも給付される商品があります。がんは、かつては入院による治療が中心でしたが、昨今では通院による治療が増えていることが背景にあります。
また、通院給付金は支払日数無制限の商品もありますが、60日以内や120日以内といった支払限度日数を設定している商品が少なくありません。がん保険の通院給付金は、日額5,000円や1万円の商品が多いです。
がん先進医療特約
がん先進医療特約は、がんの治療や診断のために先進医療を受けたときに、がん先進医療給付金として治療費の実費が給付されたり、一時金の給付を受けられたりするものです。先進医療とは、安全性と治療効果を厚生労働大臣が認定した新しい医療技術をいい、治療費は全額自己負担となります。
がん治療で用いられる先進医療の一例を挙げると、陽子線治療は268万円程度、重粒子線治療は308万円程度と高額です。がんで先進医療による治療を受けるケースは限られていますが、特約を付加しておくことで、費用を気にせずに高額な医療を受ける選択肢を持てます。
がん保険が必要な理由
医療保険でもがんによる入院は保障の対象になりますが、なぜ、がん専用の保険が必要なのでしょうか。
お金の心配を軽減できる
がんの治療で入院した場合、部位による違いもありますが、20日程度の入院で健康保険が3割負担の場合、20万円~30万円程度かかります。ただし、高額療養費制度によって、一般的な世帯で医療費の負担は月額9万円程度に抑えられ、1年で3回以上回高額療養費の支給の対象となった場合にはさらに負担が軽減されます。
とはいえ、治療が長期に渡る場合は医療費の負担が積み重なり、また、差額ベッド代などは高額療養費制度の対象外です。また、入院の準備費用がかかったり、欠勤や休職によって収入が減ったりすることも考えられます。そのため、がん保険によって給付金を受け取ることで、お金の心配を軽減して、安心して治療を受けることができるのです。
医療保険よりも手厚い保障が受けられる
「医療保険に入っていれば、がんに特化した保険は不要なのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、医療保険では十分にがんの治療をカバーできないことから、がん保険が必要とされているのです。
がんは転移や再発の可能性がある病気ですので、定期検査を受けることが必要であり、転移や再発が認められた場合には、再び治療が必要です。入院日数や手術の回数に制限のある医療保険では、がんの治療に対応しきれません。
また、がん保険は、入院限度日数がなく入院給付金の給付が受けられ、がんと診断された時点で診断給付金を受け取れます。また、放射線治療を受けると放射線治療給付金が受け取れる商品や、退院後の療養のための退院給付金の給付が受けられる商品もあります。
がん保険に入ることで、がんの治療のニーズに合った保障を備えておくことができるのです。
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がん保険が必要な人と不要な人は?
がん保険は必要な保険ですが、必ずしも誰しもが入るべき保険というわけではありません。がん保険による備えが必要な人と、がん保険が不要な人についてみていきましょう。
がん保険が必要な人
十分な貯蓄がない人は、がん保険による備えが必要です。がんの治療は長期に及ぶケースがあり、安心して治療を受けるためには、がん治療のニーズに合った保険が欠かせません。
がんの治療の先進医療の費用は数百万円程度のお金がかかることが少なくなく、1,000万円を超えるケースもあります。がん保険に加入し、先進医療特約をつけておくことで、貯金がさほどない人でも、がんになったときに最新の治療を受ける選択肢を持つことができます。
がん保険が不要な人
がん保険はがんに関するリスクに対して、お金で備えるものです。先進医療の費用を支払えるほどの十分な収入や貯蓄があり、高額な医療費を支払ったり、働けない期間があったりしても生活を維持することができる人は、がん保険による備えは不要といえます。
また、医療保険に加入し、がん特約をつけている人は、保障内容が重複してしまうため、がん保険に入る必要性が薄いです。医療保険に加入していない人は、まずは医療保険への加入を検討して、幅広いリスクに備えるべきです。
がん保険が不要というわけではありませんが、家計から保険に使えるお金は限られていますので、死亡や就労不能といったリスクに対して、優先して備えるべきケースもあります。
がん保険の選び方
がん保険は商品による保障内容の違いが大きいため、保険料だけでは一概に比較できません。がん保険の選び方のポイントをまとめました。
診断給付金を重視
がんと診断されたときに、受け取れる給付が診断給付金です。がん保険には診断給付金が主契約のタイプと、入院給付金が主契約のタイプがありますが、診断給付金が主契約のタイプがおすすめです。
最近はがんの入院日数が短くなる傾向があり、通院治療となるケースが増えています。がんの治療として手術を行って入院する場合も、通院で放射線治療を受ける場合も、診断給付金としてまとまったお金を手にできると安心です。治療内容によっては、診断給付金で治療費用をまかなえることもあります。
ただし、がん保険を選ぶときには、診断給付金を重視するべきですが、2回目以降のがんと診断されたときももらえるタイプがよいとは限りません。1回の診断給付金として受け取れる額も踏まえて比較しましょう。
定期保険で見直しをしやすくする
がん保険には、決められた保険期間の間だけ保障を受けられる定期保険と、保障が一生涯続く終身保険があります。定期保険は掛け捨てのため、保険料は割安ですが、更新のたびに保険料が上がっていくことがデメリットです。
一方、終身保険は保障が一生涯続くため、保険料が割高なため、マイホームの購入やこどもの教育資金などの支出が重なる時期に負担になりやすいです。終身保険は通常、解約返戻金を受け取ることができますが、がん保険の終身保険は保険料を抑えるために解約返戻金をなくしている商品が少なくありません。
終身保険は若い頃は、リスクが高まる将来の保険料を上乗せして払っているため、保険料が高額ですが、解約すると損をするため見直しがしにくいのがデメリットです。一方、がんの治療方法が進化すると、今後もがん保険は時代にマッチしたものに変わっていく可能性があります。また、40代以降の終身保険への加入は保険料が高くなっています。がん保険は見直しがしやすいように、定期保険を選ぶのがおすすめです。
女性は上皮内新生物が対象の商品を選択
診断給付金は上皮内新生物が対象になるかどうか、商品によって異なります。上皮内新生物に対しての治療費は大きくかかるものではなく、ほとんど完治するため、男性は上皮内新生物の取り扱いはさほど気にする必要はありません。
しかし、女性特有のがんである子宮頸がんなどでは、上皮内新生物と診断されるケースが多いため、女性は上皮内新生物が診断給付金の対象となる商品を選ぶと安心です。
また、女性専用のがん保険を打ち出している生命保険会社が多くあります。女性専用のがん保険は、乳がんや子宮頸がん、卵巣がんといった女性特有のがんの手術に手厚い上乗せ保障があったり、乳房再建術に対する乳房再建給付金などが設けられていたりします。
ただし、女性専用のがんに対する保障が手厚くなっている分、保険料も高くなっていますので、通常のがん保険とどちらを選ぶか、家計への負担も考えて検討しましょう。
こちらの記事では女性に人気のがん保険プランをリアルデータをもとに紹介しています。年齢別、満足度別で紹介しているので、これから加入を考えている方は参考にしてみてください。
まとめ
がん保険に入ると、がんにかかったときに安心して治療を受けることができます。ただし、医療保険との重複する部分が多い場合には、無駄が生じてしまいます。既存の保険と調整して見直をしたり、家計への負担のバランスを考慮したりするために、ファイナンシャルプランナーなど保険のプロに相談するとよいでしょう。