現代人にとって、ストレスは避けて通ることができない問題といえるかもしれません。仕事や家庭の人間関係が原因で、胃がキリキリ痛くなったという経験がある人もいるのではないでしょうか?この記事では、胃潰瘍とはいったいどういった病気なのか、どのように対処すればいいのかなどについて解説します。
目次
胃潰瘍とは?
胃の粘膜の下まで傷つく病気
胃潰瘍という言葉を聞いたことがあっても、具体的にどんな病気かを説明できる人は少ないかもしれません。
胃の内側は粘膜で覆われていますが、その下には筋肉の層があります。その「筋層」まで傷がついてしまう状態を「潰瘍」といいます。また、潰瘍よりは浅いところで、皮膚や粘膜が傷ついてしまう状態を「びらん」といいます。どちらも胃潰瘍の症状のひとつです。
胃潰瘍には、急性のものと慢性のものがあります。急性胃潰瘍の場合は、一か所ではなく複数箇所に潰瘍やびらんができる傾向があります。形はさまざまで、深さもそれほど深くありません。一方、慢性胃潰瘍の場合は、円形の潰瘍が一か所だけに形成されることが多い点が特徴です。
急性胃潰瘍・慢性胃潰瘍どちらも、40代から50代にかけて発症が多くなる傾向にあります。早期に回復することもありますが、繰り返し発生してしまう場合もあります。
胃潰瘍の症状とは?
上腹部や背中の痛み
胃潰瘍が原因となる痛みは、みぞおち(心窩部)のあたりや上腹部・背中に起こり、自覚症状としても多いものです。ただし、人によって痛みの程度には差があり、中にはまったく痛みを感じないという人もいます。
食事を摂ったあとに痛むことが多く、食事の途中で痛みを感じる場合もあります。食事からしばらくたって痛み出し、軽食を摂ると痛みが和らぐケースもみられます。症状がひどくなると、タイミングに関係なく痛むようになることもあるため、注意が必要です。
また、痛みの度合いが強いからといって、症状が進行しているというわけではありません。まったく痛みを感じていなかった人の胃へいつの間にか穴が開いており、激痛によってはじめて胃潰瘍と分かることもあります。ちなみに、胃に穴が開いてしまうことを「胃穿孔(いせんこう」といいます。
出血による吐血や下血
筋肉の層まで傷がつくと、胃から出血がみられるケースもあります。出血している最中には、冷や汗をかいたり脈拍が乱れたりすることが多く、血圧が低下したり、激しい痛みを伴う場合もあります。
出血に達すると、口から血を吐いたり、便に血が混じったりすることがあります。どちらの場合も、血の色は胃酸によってどす黒くなる傾向にあります。口から吐く「吐血」の場合は気付きやすいものの、便に混じる「下血」にはしばらく気付かない人もおり、貧血になって原因を調べてみたら胃潰瘍だった、という例もあります。
中でも、高齢者は特に注意が必要と考えられます。胃潰瘍による出血が、心臓の病気(心筋梗塞・狭心症など)の原因となってしまうこともあるためです。
過酸症によるゲップや胸やけ
胃潰瘍のために胃酸が多く分泌される(過酸症)と、口臭がひどくなったり、酸っぱいゲップが出たりします。また、胃酸と胃粘膜とのバランスが崩れてしまうことにより、胸やけの症状が起こることもあります。
胃潰瘍の原因とは?
過労やストレス
個人差はあっても、ストレスを抱えている人は少なくないでしょう。ストレスそのものは、直接胃へ何か悪さをするわけではありません。ストレスによって発生する自律神経の乱れが胃に影響すると考えられています。
人間がストレスを感じたときには、脳から胃へ「ぜん動運動を活発にしなさい」という指令が副交感神経を経由して出されます。その結果、胃酸の分泌量が増加し、胃の粘膜が薄くなるということが繰り返され、やがて胃の粘膜の下の筋肉層まで傷つけてしまう場合が多くなっています。
ピロリ菌
ピロリ菌は、正式には「ヘリコバクター・ピロリ」という細菌です。らせん状の形をしており、胃の中に定住する悪玉菌です。ピロリ菌に汚染されている水や食べ物を摂ることで感染するケースがほとんどです。
衛生状態が比較的良好な中で育った人が多い20代の感染率は2割程度ですが、50代以上になると8割以上が感染しているともいわれています。ただし、ピロリ菌に感染しているすべての人が胃潰瘍を発症するというわけではありません。ピロリ菌によって作り出される物質が胃の粘膜を傷つけるため、胃潰瘍にかかりやすい状態になるということです。また、暴飲暴食などで胃に負担をかけ続けた場合にも、胃潰瘍の発症リスクは高まるとされています。
NSAIDs
NSAIDsは「エヌセイド」と読み、非ステロイド性の抗炎症薬をさします。熱を下げたり痛みを抑えたりするときに使われることの多い薬で、胃酸の分泌が増える・胃の血流が悪くなるなどの副作用がみられる場合があります。このような副作用が起こると胃粘膜の防御能力が下がり、胃に負担がかかって胃潰瘍を引き起こすことがあります。
エヌセイドには、内服タイプと坐薬タイプがあります。直接胃に刺激を与える内服タイプの方が、胃潰瘍の発症リスクは高くなります。ただし、坐薬タイプも効き目成分が血液に溶け出して効果を発揮するため、胃に負担がかからないというわけではありません。
胃潰瘍の検査とは?
内視鏡検査
内視鏡検査とは、カメラが先端についている管を体内へ入れて、胃の中を直接観察する方法です。以前は口から入れるものが主流でしたが、今は鼻から入れるタイプのものもあり、検査を受ける人の負担は軽減される傾向にあります。
胃の中を直接見られる分、粘膜がどんな状態か、潰瘍はないかなどを確認することができ、レントゲンには映らないような早期のがんが見つかることもあります。もしも何がしかの症状が認められた場合、進行度合いについても診断することができます。
ピロリ菌の検査
胃潰瘍の一因となるピロリ菌がいるのかどうかを検査するときにも、内視鏡を使う場合があります。内視鏡以外に、次のような方法で調べる場合もあります。
「尿素呼気試験」は、尿素を含む錠剤の検査薬を服用して検査します。服用する前の呼気と、服用してから20分経ったときの呼気をそれぞれ集めて診断します。ピロリ菌はウレアーゼという酵素を発生させ、尿素はその酵素によってアンモニアと二酸化炭素へ分解されるため、呼気中の二酸化炭素の量によってピロリ菌の有無を判定します。ピロリ菌を除菌する治療を行った後の確認検査としても用いられることがある方法です。
「抗体測定」は、血液や尿を使って検査を行う方法です。何らかの菌に感染すると、人間は菌に対する抗体を作って抵抗力を高めようとすることがあります。この検査では、採取した血液や尿にピロリ菌への抗体が存在するかどうかを調べます。
「糞便中抗原測定」は、糞便の中のピロリ菌を調べる検査です。胃の中にいるピロリ菌は糞便中に排泄されるため、その有無を確認する方法です。採血が難しい幼児などに用いられることの多い検査です。
胃潰瘍の治療法とは?
投薬治療
投薬治療では、胃酸の分泌を抑えたり、粘液の分泌を促して胃の粘膜を保護したり、胃の血流を増やす薬(PPI、H2ブロッカーなど)によって症状の改善を試みます。薬で症状が治まる場合は多いものの、自分の判断で飲むのをやめてしまうと再発の危険性もあります。
ピロリ菌の除去
胃の中にいるピロリ菌を、薬を用いて除菌する方法です。多くの場合、プロトンポンプ阻害薬と2種類の抗菌薬が使われます。これらを約1週間飲み続け、ピロリ菌がいなくなったかどうかを検査します。除去できなかった場合、服薬を7日間延長します。
除菌治療は成功率が比較的高く、約8割程度ともいわれています。うまくいかなかった場合に再除菌をするのかどうかという点や、時期をいつにするのかなどの点ついて、主治医とあらかじめ検討しておく必要があります。
内視鏡的止血術
胃潰瘍が進行して出血している場合、まずは止血の処置が行われます。方法はいくつかありますが、内視鏡を使って出血している箇所へ止血剤を注射したり、小型のクリップを患部にかけたりします。また、レーザーで出血部分を焼くという方法もあります。
出血によるショックを軽減することで、再出血の可能性を下げる効果が期待できるとされています。止血が行われたのち、主治医の指導のもとで服薬治療、日常生活・食事の改善などを行い、症状の軽快を目指すケースが多くなっています。
胃潰瘍で入院した際の期間・費用などはこちらの記事にもまとめてあるため参考にしてください。
胃潰瘍のとき食事はどうする?
脂肪やタンパク質の多い食事は避ける
食道を通過した食べ物はまず胃へ入るため、食事は胃の健康状態へ影響することが少なくありません。暴飲暴食や早食いなどは胃に負担をかけるため、できる限り避けた方がよいでしょう。また、毎日3食をなるべく同じ時間に摂るようにし、規則正しい食生活を心がけましょう。
食べ物を選ぶときの注意点ですが、脂肪やたんぱく質が多いものは、消化するときに胃酸がたくさん分泌されます。そのため、食後に胸やけを起こす原因となることがあります。脂身の多い肉などは避けるようにしましょう。そのほか、胃酸を多く分泌する食べ物として煮豆や和菓子などの甘いもの、漬物や塩辛など塩分の多いもの、酢の物や柑橘類など酸味の強いものも挙げられます。
胃に負担のかからない食べ物を選ぶ
胃に負担の少ない食べ物として、おかゆや煮込みうどんなどがあります。味付けは薄めにすると、より胃の負荷を軽くすることができます。バナナやヨーグルトなどもおすすめです。食事には時間をかけ、消化しやすくなるようによく噛むことがポイントです。
胃潰瘍になっても保険に入れる?
部位不担保が就くケースも
胃潰瘍と診断された場合、医療保険や死亡保険などへは加入することができるのでしょうか?
生命保険に入るときには、持病や既往症の審査があります。一般的に、持病のある人は生命保険への加入が難しかったり、保障範囲を限定された上での加入になったりするケースがみられます。
胃潰瘍についても、持病とみなされる場合があります。胃潰瘍は早期に発見されれば、適切な治療によって完治することもある病気ですが、再発してしまう可能性もゼロとはいえません。
医療保険に加入できても、「部位不担保」といった条件が付くことがあります。胃潰瘍に対する部位不担保とは、「加入後〇年間は胃・十二指腸などの病気に関しては保障の対象外とする」などという制限がつくことで、胃や十二指腸以外の病気に関しては保障を受けられるということです。
ただし、胃潰瘍になったのがかなり前のことで、完治してから何年も経っているような場合には制限が付かないケースもあります。判断基準は生命保険会社によって異なるため、加入前に確認してみてください。
引受基準緩和型保険も検討
現在も胃潰瘍の治療中である人や、完治からそれほど時間が経っていない人は「引受基準緩和型保険」(ひきうけきじゅんかんわがたほけん)を検討してみるとよいかもしれません。
引受基準緩和型とは、加入基準を緩くしているため通常よりも入りやすい保険のことをいいます。3~5項目程度の簡単な告知項目があり、それらに該当しなければ加入の申し込みをすることができることがほとんどです。直近の入院や手術に関する質問の回答がすべて「いいえ」であれば、胃潰瘍の治療中でも申し込み可能となる場合もあります。
注意が必要なのは、通常の生命保険よりも保険料が割高であったり、加入後の一定期間は保障額が制限されたりする場合もあるという点です。申し込みの際には、内容をよく確認してください。
まとめ
胃潰瘍は身近な疾患といえ、しっかりと治療すれば治る場合が多い病気でもあります。症状が出ているにもかかわらず何の対処もしないと、さらに重篤な病気に繋がってしまう危険性もあるため、胃に異変を感じたら早めに医療機関を受診するようにしてください。胃潰瘍になっても、完治から時間が経っていれば通常どおり加入できる保険や、治療中であっても条件付きで加入できる保険などがあります。いろいろな保険を比べてみたいという人は、代理店へ行って相談してみることがおすすめです。
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