病気はいつ襲ってくるか分かりません。特に日本人の死因の50%以上を占める三大疾病や、生活習慣病を含む七大疾病で入院する人は、3人に1人と言います。もしものときにあわてないためにも、その治療に要する費用を準備しておくことが重要です。三大疾病・七大疾病にはどのようなものがあるのか、それに備えるにはどういった保険商品があるのかについて解説します。
目次
疾病とは
病気や疾患との違い
健康志向の高まりとともに、食事を見直したり定期的に運動をしたり、身体に気を遣う人が増えています。「病気予防のために、ウォーキングやジョギングをはじめようかな」などと考えている人もいるかもしれません。また、三大疾病という言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
ところで、その「病気」と「疾病」とでは、どのような違いがあるのでしょうか。また、似た意味として「疾患」という言い方もあります。どれも普段なにげなく使うことが多い単語ですが、なかなか明確に違いを説明することは難しいのではないでしょうか。
疾病とは医学的・生物学的に定義されるもので、医者などの専門家が診断するものです。他人が見て判断する、つまり客観的に決まるものが疾病です。そして、疾患は、疾病とほぼ同じ意味として定義されています。
一方で病気は、疾病のために具合が悪い状態を指します。つまり、病気は「調子が悪い」といった本人の主観的な感覚も含むことになるのです。ちなみに英語では疾病は「disease」、病気は「sickness」と、それぞれ別の単語で表現しす。
したがって、治療が必要であると医者などが判断したものが疾病であり、三大疾病や七大疾病などと表されます。三大疾病や七大疾病については次の項で説明します。
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死因の50%以上を占める3つの病気
三大疾病とはがん(悪性新生物)・心疾患・脳卒中のことを指します。厚生労働省が発表している「平成28年(2016)人口動態統計(確定数)」によると、日本人の死因は以下のようになっています。
第1位 がん
第2位 心疾患
第3位 肺炎
第4位 脳卒中(脳血管疾患として)
それぞれの病気については、次の項から詳しく解説します。
がん
がん(悪性新生物)は、日本人の全死因のうちの28.5%を占めています。体重1キログラムあたり約1兆個あるとされている人間の細胞は、絶えず新しいものが作られ、古いものと入れ替わっています。
何らかの原因でその過程でエラーが発生することで、がん細胞が生まれてしまうことがあります。がん細胞は、正常な細胞から栄養を奪い取ってどんどん増殖し、やがて命を脅かすとされています。
がんは発生した部位によって名称が異なります。国立がんセンターの統計によると、2016年のがんの部位別死亡数の上位3つは、男性は肺・胃・大腸、女性は大腸・肺・膵臓、全体では肺・大腸・胃となっています。細胞があるところにはがんが発生すると言い、白血病・悪性リンパ腫といった血液のがんもあります。
がんは1981年以来、ずっと日本人の死因のトップとなっています。全国健康保険協会によると、およそ2人に1人ががんと診断されています。
心疾患
心疾患は、日本人の全死因のうちの15.1%を占めています。心疾患とは、心臓を取り巻いている冠動脈という血管が、動脈硬化などで狭くなったり詰まったりすることで起こる病気の総称です。
心臓は、ぎゅっと収縮して体全体に血液を送っています。いわば心臓は血液のポンプとも言えますが、心臓に血液が送られにくくなるということは、酸素や栄養が届かなくなるということです。
冠動脈が狭くなることで充分に血液が送られなくなり、胸の痛みや圧迫感が起こる状態を狭心症と言います。また、冠動脈が詰まってしまい、心筋に血液がながれない状態を心筋梗塞と呼んでいます。
脳卒中
脳卒中を含む脳血管疾患は、日本人の全死因のうちの8.4%を占めています。脳卒中は一般的な呼び名であり、正式には脳血管障害と言います。
脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などが脳卒中の代表的なものですが、それぞれ原因となる危険因子は異なります。すべてに共通しているのは、高血圧と加齢が影響しているということです。
脳卒中の語源は「卒然として邪風にあたる」という漢語から来ていて、悪い風にあたって突然倒れるという意味です。今のように医学が発達していなかった時代には、血管が詰まって倒れたということが分からなかったので、悪い風にあたったと考えたようです。
CTやMRIなどで偶然発見されるものも含めて脳卒中と呼んでいます。1981年にがんが日本人の死因の1位になるまでは、1951年から30年間、脳卒中が死因の1位でした。死因としては順位は下がりましたが、一命をとりとめても寝たきりになる確率が高く、入院期間も他の疾患よりも長くなる傾向があります。
三大疾病保険の主な保障内容
三大疾病の治療費は高額になりがち
科学の発達とともに、医療もどんどんと進歩しています。症状に合った適切な治療を受けることで、三大疾病にしっかりと立ち向かうことができるとも言えます。
ただし、治療を受けるのにはお金や時間がかかります。特に三大疾病は入院が長期に渡る可能性が高いです。全日本病院協会の2013年1月~3月の調査によると、主な三大疾病の医療費は平均で以下のようになっています。
【がん】
肺がん・気管支がん…758,570円
結腸がん…828,190円
直腸がん…1,121,630円
胃がん…975,060円
乳がん…764,830円
【心疾患】
急性心筋梗塞…1,867,300円
【脳血管疾患】
脳梗塞…1,596,280円
これはあくまでも平均の金額のため、症状の重篤性やどのような治療法を選ぶかによっても変わることに注意してください。ちなみに、健康保険では高額療養費の制度があり、実際の自己負担の額は10万円前後まで軽減されます。ただし、高額療養費は健康保険が適用されるものに限られるため、入院時の食事代・保険適用外の治療・個室費用や差額ベッド代などは高額療養費の対象外です。
三大疾病一時金
三大疾病一時金は、三大疾病で所定の状態になったときに、100万円・200万円・300万円などのまとまった金額を受け取ることができるものです。無事に退院した後も、通院治療やリハビリなどで医療費がずっと必要になる場合もあるため、三大疾病一時金は備えになると言えます。
ただし、受け取ることができる条件である「所定の状態」の定義は、各保険会社・保険商品によって異なります。また、受け取りのタイミングも疾病によって異なるため、あらかじめ確認が必要です。
一般的には、がんについては診断確定されたときに給付を受けることができます。一方、心疾患や脳血管疾患については、診断確定だけでなく労働の制限や後遺症などの条件が必要になることが多いです。
死亡・高度障害保険金
死亡・高度障害保険金とは、保険の加入者が万が一死亡・あるいは高度障害状態になったときに設定した保険金が受け取れるものです。三大疾病以外の原因での死亡や高度障害状態でも受け取ることができます。
三大疾病入院給付金
三大疾病入院給付金は、医療保険などの特約として付加できるものです。三大疾病で入院している間、1日あたり5,000円~10,000円程度の決められた金額を受け取ることができます。通常の入院給付金は日数の上限がある場合が多いですが、三大疾病入院給付金は制限がないものがほとんどです。
三大疾病通院給付金
三大疾病通院給付金も、医療保険などの特約のひとつです。三大疾病通院給付金を付加すると、入院を伴う通院に対して、1日あたり5,000円~10,000円程度の決められた金額を受け取ることができます。
三大疾病の治療は、すべてが入院で行われるわけではありません。入院による治療を行った後、通院による治療が長期に渡るということも考えられます。三大疾病通院給付金は、通院による治療費にも備えることができる特約です。
1つ注意しておきたいことは、あくまでも「入院を伴う通院」に対しての給付であるという点です。入院の前後の関連した通院は給付の対象になりますが、単なる通院に対しては支給されません。保険金が受け取れると思っていたのに受け取れなかった、ということにならないように特約の内容はしっかり理解しておきましょう。
七大疾病とは?
三大疾病+4つの生活習慣病
三大疾病と並び、生活習慣病という言葉を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。厚生労働省によると、食事や喫煙、飲酒等の習慣によって発症あるいは進行するものを生活習慣病と呼んでいます。そして、先ほど説明した三大疾病に加えて、高血圧性疾患・糖尿病・肝疾患・腎疾患の4つの生活習慣病を七大疾病と呼んでいます。
ちなみに生活習慣病は、以前は成人病と言われていたものです。成人病という名前では、成人にならないとかからない病気という誤解を与えるために、生活習慣病と名称が改められました。
生まれつき生活習慣病になりやすい遺伝子を持っている場合でも、生活習慣病になるとされています。万が一遺伝子に疾患がある人は、それほど悪い生活習慣をしていなかったとしても発症してしまうかもしれません。
入院患者の1/3は七大疾病
厚生労働省が発表した「平成23年患者調査」では、七大疾病で入院している人は、全入院患者の31.7%を占めています。つまり、入院患者の約3人に1人が七大疾病が原因で入院していることになり、三大疾病だけでなく七大疾病に対してもあらかじめ備えを用意しておくことが必要です。
七大疾病を手厚くカバーする保険とは?
入院給付金を手厚く給付
保険会社や保険商品によっても異なりますが、一般的な保険では基本の入院給付金には日数の上限が設定されているものが多いです。そして、特約として三大疾病にかかったときには入院日数を無制限、七大疾病にかかったときには、基本日数プラス何日といった形で、限度日数が延びるようになっています。プラス60日やプラス120日といったように、限度日数を選べる商品が多く販売されています。
ただし、手厚い保障内容の商品に加入すれば備えとしては良いですが、保険料も高くなります。保険に加入、あるいは見直す際には七大疾病に対して、自分はどの程度の備えをしておいた方がいいのかをよく考えてみましょう。自分の家系に多い病気などから検討してみるのもいいかもしれません。
保険選びで悩んだらプロに相談
保険は、販売する会社によって商品内容や保険料が大きく異なります。保険に加入する際には、ひとつの保険会社で選ぶのではなく、複数の会社や商品を比較してみましょう。
そして、多くの場合保険は長期間加入することが多い商品です。保障を手厚くしようとするあまり、家計に負担がかかる保険料を設定してしまうと、契約途中で解約してしまい本当に保障が必要な時に備えられない可能性もあります。いくらまでなら無理なく保険料を支払えるかについて、よく考えてから保険に加入することをおすすめします。
また、よく契約内容を把握しておかないと、万が一病気になっても保険金支払いの対象外になってしまう可能性もあります。もしも保険選びで分からないことや保険内容に不明な点があったら、保険会社の相談窓口に相談してみましょう。あるいはFP(ファイナンシャルプランナー)などのプロに相談すると良いかもしれません。
まとめ
病気に対する備えは、まず普段の生活習慣を見直し、健康を維持できるように意識することが大切です。それと並行して、いつ襲ってくるか分からない病気に対して、保険に加入するなどの備えをしておくことも必要といえます。ただし、昔に比べて入院期間が徐々に短くなってきているなど医療も変化しています。保険に加入したらそのままにするのではなく、定期的に保険内容を確認してみましょう。そして、万が一不足している保障があれば、早めに契約内容を見直すことをおすすめします。
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