病気やケガ、死亡、あるいは、事故や災害など、様々なリスクに備える保険が、生命保険会社や損害保険会社などから展開されています。そこで、そもそも保険とは何か、保険の種類を紹介したうえで、生命保険の選び方や見直し方を解説していきます。
目次
「保険」の意味とは?
「保険」にはどのような意味があるのでしょうか。保険とは何か、また、保険の必要性についてみていきましょう。
相互扶助の精神でリスクに備える
保険は将来発生するかもしれない、非定量で非定型のリスクに対して、予測される発生確率に応じて、加入者が保険料を分担し、リスクに備えるものです。保険は困ったときに助け合う、相互扶助の精神で成り立っていますので、万が一の際には保険金や給付金を受け取ることができます。
リスクとは偶発する予期しないことをいい、死亡や病気、ケガ、事件や災害など、様々なリスクがあります。保険は、生命や財産を守るための手段のひとつです。
保険は大きな保障を確保可能
「リスクに対する備えは貯蓄でよいのでは?」と考えるかもしれません。しかし、貯蓄リスクに備えるために貯蓄を始めても、目標額まで積み立てている間は、積立金額は徐々に増えていくものの、万が一の際に不足するお金が発生します。一方、保険であれば、保険料を支払った時点で、万が一の際に必要な金額の保障を受けられます。
大きなお金を貯めるには長い期間を要しますが、保険は初めから大きな保障を確保できるので、「貯蓄は三角、保険は四角」といわれているのです。
保険の仕組み
保険の基本構成や保険料の内訳など、保険の仕組みについて解説していきます。
基本構成は「主契約+特約」
保険は基礎となる主契約に、上乗せするオプション部分である特約を加えるのが基本的な構成です。主契約は死亡保障や医療保障、がん保障といったもので、主契約が死亡保障であれば死亡保険、医療保障の場合は医療保険と呼ばれています。
特約は病気やケガに備える医療保障が主契約の場合、通院特約や三大疾病特約、先進医療特約など、部分的に手厚い保障にしたり、主契約ではカバーできない部分を補ったりするものです。付加できる特約は保険の種類によって一般的なものがありますが、商品によって異なります。
保険料の内訳
保険料の内訳は、純保険料と付加保険料に分けられます。純保険料は、保険事故が発生した際に支払われる保険金の原資となります。付加保険料は、保険会社の経費として使われるお金と利益です。
純保険料は生命保険の場合、予定死亡率と予定利率にもとづいて算出されます。予定死亡率は、過去の統計などの情報をもとに予測した死亡率で、保険金の支払いが発生する額を予測するためのものです。予定利率は保険会社が株や投資で保険料を運用した収益を保険料から割り引く割引率です。
付加保険料は人件費や事務費、宣伝費などの運営費用として見込まれる予定事業利率をもとに計算されています。
保険の種類
保険は第一分野と第二分野、第三分野に分類されています。それぞれに属する保険の種類について、具体的にみていきましょう。
第一分野から第三分野に分類
民間の保険は第一分野と第二分野、第三分野の3つに分類されています。
第一分野は生命保険で、収入保障保険や個人年金保険、学資保険なども含まれます。第二分野は損害保険で、火災保険や個人賠償責任保険、自動車保険、国内旅行保険や海外旅行保険などです。第三分野は、第一分野とは第二分野の中間的な位置づけの保険で、医療保険やがん保険、介護保険などが当てはまります。
第一分野の生命保険は生命保険会社、第二分野の損害保険は損害保険会社が販売しますが、第三分野は生命保険会社と損害保険会社のいずれも取り扱うことが可能です。
生命保険(死亡保険)
生命保険(死亡保険)は、死亡や高度障害に備えるための保険です。万が一、死亡したときに残された家族の生活を維持したり、葬儀費用などの死亡整理金を準備したりすることを目的としています。
生命保険の主な種類には、定期保険と終身保険、養老保険があります。定期保険は保険期間が決められた掛け捨ての保険で、保険料は割安です。ただし、更新型の定期保険は、更新のたびに保険料が上がっていきます。
終身保険は一生涯保障が続く保険で、保険料は変わりません。ただし、死亡保険金、または高度障害保険金が必ず受け取れるため、保険料は割高です。中途解約した場合は解約返戻金が支払われ、保険料払込期間が終わる頃になると、解約返戻金が払込済み保険料の総額を上回ります。
養老保険は保険期間が決められた保険で、死亡保険金と満期保険金が同額なのが特徴です。養老保険も必ず保険金が受けとれますので、保険料は高いです。
収入保障保険
収入保障保険は一種の生命保険で、保険期間が決められ、死亡した時期から残りの保険期間の間、年金形式で死亡保険金が支払われます。保険期間が30年で月額10万円の年金という契約の場合、保険期間が20年残っているタイミングでは、受け取れる死亡保険金の総額は2,400万円です。しかし、保険期間が残り5年の場合は600万円になります。
一般的には、万が一の際に必要な生活費や教育費の総額は次第に減っていくので、収入保障保険は必要な保障を割安保険料で備えられる効率のよい保険です。
医療保険
医療保険は病気やケガに備えるための保険で、入院給付金と手術給付金が主契約になっていることが一般的です。主な特約には通院特約や三大疾病特約、先進医療特約、女性疾病と特約などがあります。
医療保険を大きく分けると、終身医療保険と定期医療保険に分類できます。終身医療保険は一生涯保障が続く保険で、保険料は一定です。保障内容も一定ですが、年齢制限のある特約があるケースもみられます。中途解約した場合には解約返戻金が支払われますが、昨今では解約返戻金をなくして、保険料を抑えたタイプの商品も打ち出されています。
定期医療保険は、5年や10年といった保険期間が設定された保険で、終身医療保険よりも保険料は割安ですが、更新のたびに上がっていきます。また、契約できる年齢に制限があるため、一生涯の保障を手に入れることはできません。
こちらの記事では医療保険における「掛け捨て」と「積立」の違いから選び方まで幅広く紹介しています。
がん保険
がんはがん専門の保険で、主な保障は診断給付金と入院給付金、手術給付金、通院給付金です。がん保険は契約完了から3カ月間の不填補期間があるため、保障が受けられるのは契約完了から3カ月後の責任開始日以降になります。
診断給付金はがんと診断されたときに給付される一時金で、がんになる前の上皮内新生物と診断されたときの扱いは商品によって異なります。入院給付金は医療保険と異なり、1入院あたりの入院支払限度日数や、保険期間を通じた通算支払限度日数に制限がないのが特徴です。
がん保険の代表的な特約として挙げられるのは、先進医療特約です。大学などの専門機関で研究開発された新しい医療技術のうち、厚生労働大臣が認定した先進医療による治療を受けた場合に、治療費などの実費が支給されます。
こちらの記事ではがん保険の必要性から「終身保険」と「定期保険」の違い、女性目線での選び方まで幅広く紹介しています。
自動車保険
自動車保険は、加入が義務付けられている自賠責保険でカバーしきれない部分を補うための保険です。自動車保険の主な補償を挙げていくと、相手側への補償として人に損害を与えた場合の対人賠償と、物に損害を与えた場合の対物賠償があります。
自分や搭乗者のための補償では、搭乗者傷害保険は運転者や同乗していた人に対する死亡や後遺障害、ケガなどを補償するものです。自損事故保険は、単独で事故を起こした場合に補償を受けられるもの、無保険車傷害保険は事故の時に相手が保険に入っていなかったときなどのための保険です。
このほかに、相手側との過失割合に関わらず、死亡や後遺障害、ケガが補償される人身傷害保険もあります。車両保険は自分の車の修理代を補償するためのものです。
こちらの記事は自動車保険料の相場を詳しく紹介しています。年代によって変わる見積平均額についても触れられているので参考にしてみてください。
生命保険など保険の選び方
生命保険などの保険はどのように選んだらよいのでしょうか。年代別に必要な保障をもとに、目的に合った保険の選び方をまとめました。
年代別の必要な保障
生命保険に入るときは、まずは加入目的を明確にして、目的にあった保険に入ることが大切です。20代や30代で未婚の場合は、葬儀費用やお墓代などの死亡整理金の確保が生命保険の目的になりますが、大きな保障は必要ありませんので、医療保険を重視するべきです。終身医療保険は保険料が安い若いうちに加入しておくと、トータルでの保険料を抑えられます。
結婚をしたら、生命保険の加入目的に生活費の備えが加わり、独身の頃よりも大きな保障が必要です。また、子ども生まれたら、教育資金の準備もスタートしましょう。子どもが独立した50代は、老後資金や介護費用の備えを考えるべきタイミングです。
目的に合った生命保険を選ぶ
生命保険の主な種類は定期保険と終身保険、養老保険ですが、これに生命保険の一種である収入保障保険を加えた4つの中から、目的に合った保険を選びましょう。
20代や30代の独身の人で、死亡整理金を準備したい場合は終身保険を利用するのがおすすめです。払込済み保険料を上回る死亡保険金を遺族が必ず受け取れます。また、生命保険の死亡保険金は相続税の基礎控除とは別枠で、「500万円×法定相続人」の非課税枠があります。
終身保険は掛け捨てではないことが魅力ですが、保険料が割高なため、配偶者や子どもの生活費や教育費をすべてカバーしようとすると、保険料が高額になってしまいます。子どもが独立するまでの保障を一定期間の、手厚くするためには、定期保険との併用がおすすめです。
また、子どもが独立するまでに必要となる生活費や教育費の総額は徐々に減っていきますので、収入保障保険を活用すると保険料を抑えられます。老後の資金の確保が目的の場合は、死亡保険金と満期保険金が同額の養老保険が向いています。
生命保険の見直しをするには?
一度入った生命保険はそのままにするのではなく、家族の状況の変化などに応じて見直しをするべきです。生命保険を見直すべきタイミングやポイントをみていきましょう。
生命保険の見直しをするべきタイミング
家族構成やライフステージが変わったときは、保険を見直すべきタイミングです。
まず、結婚をして新たな家族となったとき、片方が生活を支えていたり、共働きでも家計の負担割合に差があったりする場合には、万が一の際の生活費の備えが必要になります。子どもが生まれるときは、生活費や教育費のために死亡保障を上乗せしたり、学資保険へ入ったりすることを考えるべきタイミングです。
住宅ローンを利用してマイホームを購入したときには、団体信用生命保険に加入することになるため、万が一亡くなったときは住宅ローンの残債がゼロになります。生活費のうち、住居費に関する備えを大きく削減することができます。そして、子どもが独立した後は、死亡保障を小さくして、老後資金の確保のため、保険を見直すとよいでしょう。
また、保険料の負担が重く、支払いを続けていくことが困難に感じたときや、更新や満期の時期を迎えたときも、保険を見直すべきタイミングです。
生命保険を見直すポイント
保険を見直すときは、まずは加入している生命保険が定期保険や終身保険、養老保険のどれにあたるのか確認します。保険の種類によって、保険料は一定かそれとも更新で上がるのか、解約返戻金や満期保険金はあるのかといった点が異なるためです。
つぎに、保証金額や解約返戻金、満期保険金の額を確認し、万が一の際に入るお金と、確実に入るお金を把握します。そして、ライフサイクル表をつくって、ライフイベントと必要になるお金を書き入れ、備えがあるお金や貯蓄と比べて、保障が足りていないところや過剰なところを把握しましょう。
これまでの終身保険の保障では足りない場合は、家計に余裕があれば、定期保険や収入保障保険を併用する方法が考えられます。あるいは、定期保険が更新を迎えると、保険料の負担が重い場合、収入保障保険に切り替えると保険料の負担を軽減できるケースがありますので、シミュレーションしてみましょう。
保険の無料相談を利用しよう
保険の見直しをするとき、加入している保険をそのままにした方がよいのか、解約して新しい保険に入って方がよいのか、判断に悩むことがあるかもしれません。また、収入保障保険をひとつとっても、多くの保険会社から展開されていますので、自分に合った保険を探すのは時間と手間がかかります。
そこで保険を見直すときにおすすめなのが、ファイナンシャルプランナーによる保険の無料相談の活用です。ファイナンシャルプランナーに相談すると、家族構成やライフプラン、家計の状況などを踏まえたうえで、多くの保険会社の商品の中から、最適な保険プランの提案を受けられます。相談の結果、そのままの方がよいといわれることもあります。また、提示された保険に入らなくても問題ありません。自分に合った保険に見直すためにプロの手を活用してみましょう。
まとめ
数ある保険の種類の中でも、生命保険は長期に渡って保険料を支払い、備える保障も高額です。生命保険は、家計に大きく影響するものといえます。保険の種類による特徴の違いを理解するととともに、節目となるタイミングで定期的に見直しを行い、自分や家族に合った保険に入るようにしましょう。