離婚にあたって注意すべき点の一つが生活費です。特にどちらかが専業主婦(主夫)であった場合、別居中や離婚後にどのくらい生活費をもらえるのかは生活してゆく上で重要な問題といえます。今回は、別居や離婚に至った際、相手に生活費の支払い義務はあるのか、また、いくらぐらいもらえるのかなどについて説明します。
目次
別居中の生活費は請求できる?
別居中は婚姻費用の請求が可能
別居することとなっても、法律上夫婦である以上はお互いに生活を支える義務があります。そのため、仮に別居中の配偶者から生活費が与えられない場合には、「婚姻費用分担請求」によって生活費を払ってもらう権利を行使することができます。婚姻費用とは、家庭が通常の暮らしを維持するために必要となる生活費のことで、家賃や学費、その他の経費などを指します。
「婚姻費用算定表」が費用の基準
婚姻費用の算定の基準となるのが「婚姻費用算定表」です。この表は裁判所のホームページなどへも掲載されており、子供の人数や年齢、支払う人・もらう人それぞれの年収などに応じて婚姻費用や養育費を算出する際の基準となるものです。表中の金額をベースとして、最終的な金額をいくらにするかは夫婦ごとに決定されることになります。
離婚後に婚姻費用の請求はできない
注意すべき点として、「離婚後に婚姻費用の請求はできない」ということが挙げられます。2018年7月現在、離婚後の生活費については支払いを義務とする法律が存在しないためです。そのため、婚姻中の生活費については、離婚前に請求をする必要があります。別居を始めたタイミングなど、離婚前のなるべく早い段階で請求することがポイントといえます。
未払いの婚姻費用は財産分与で清算
請求した婚姻費用の一部または全部が支払われていない場合、離婚時の財産分与手続きの中で請求することが可能となることがあります。本来、支払われていない婚姻費用を民事訴訟で請求することはできないのですが、支払いがない場合には相手側の負担が大きいものとみなされ、財産分与の金額決定時に「一切の事情」として考慮される場合があります。
しかし、この場合も過去の婚姻費用の支払い義務を確定させておく必要があり、支払われていない婚姻費用の金額等を証明できるようにしておくことが必要です。
離婚後の生活費も請求可能?
離婚後は生活費の支払い義務なし
離婚後の生活費については、支払いの義務はありません。婚姻中は、生活レベルを同程度にして暮らすことができるようにお互いに助け合うという「生活保持義務」が定められているために支払い義務が生じますが、離婚後はこうした義務がないためです。
離婚後は子供の養育費にシフト
離婚後に請求できる権利の一つとして、子供の「養育費」も挙げられます。婚姻費用は家族の生活費を指しますが、養育費は離婚後に子供が暮らしていくための費用です。婚姻関係を解消して他方へ親権が移った場合でも、親子という関係性は変わらないため、離婚後も子供に対する扶養義務・養育費の支払い義務は継続して発生します。婚姻中は婚姻費用の請求を行い、離婚後には養育費の請求にシフトするというケースが多いのはそのためです。
扶養的財産分与が認められるケース
原則として、夫婦間の扶養義務は婚姻中のみであり、離婚により終了します。しかし、離婚後に相手方が経済的に厳しい状況になる場合には、「扶養的財産分与」が認められる場合があります。認められるケースは限定的ですが、例えば「離婚の要因として相手方(支払い側)の配偶者に大きな責任がある」「諸事情により、離婚後の生活の見通しが厳しい」「再就職できる可能性が低い」「再婚の可能性が低い」「分与する側に経済的余裕がある」等が挙げられます。
扶養的財産分与の金額の目安
扶養的財産分与で支払われる金額の目安は、婚姻費用の2~3年分となります。離婚後には扶養義務が発生しないという前提のもと、「自立の準備期間として最小限必要と考えられる金額」とされる基準です。なお、高齢者である等の特殊な事情が加味される場合には、平均余命まで婚姻費用が支払われるようなケースも中にはあります。
離婚後の生活にかかる費用は?
新しい住まいのための費用
離婚後は様々なポイントでお金がかかることがありますが、大きな出費の一つと言えるのが住居費です。離婚後に民間の賃貸に住む場合には、家賃のみならず、敷金・礼金等や新しい家財等も必要となります。物件の広さや築年数等にもよりますが、トータルの費用として30万~50万円程度が見込まれます。
子供の転校にかかる費用
離婚によって住所が変わると、子供が転校しなければならない場合があります。その際には、新しい学校の制服・体操服・教科書・学用品等を購入する費用が発生します。また、保育所や幼稚園が変わる場合も、費用や制服の準備が必要となります。
仕事を探すための費用
職についていなかった場合、仕事を探すための費用も準備しておかなければいけません。例えば、面接用のスーツや靴、履歴書に貼る写真の撮影費用、交通費等が必要です。小さい子供がいる場合には、託児所等の費用も用意しておいた方がよいでしょう。これらの費用をカバーするため、離婚前には100万円程度の貯金を用意しておくと安心です。
児童扶養手当などについて調べておく
離婚後の生活費の確保に向けては、児童扶養手当等に関して調べておくとよいでしょう。例えば児童扶養手当は、18歳以下の児童を育てているひとり親の家庭に対し、所得に応じて支給されます。また、元配偶者に請求することのできる養育費や慰謝料を生活費にあてることもできます。養育費については、公正証書の作成等によって支払いを受ける権利を守ることができるため、手順や必要書類などについて把握しておきましょう。
公正証書の作成方法や費用については、下記の「公正証書の作成費用とは?遺言や離婚などでの作成について解説」も参考にしてください。
まとめ
離婚によって様々な費用がかかるケースもありますが、婚姻費用の請求や公的サポート等を利用すると一定の割合をカバーできるケースがあります。支払われる金額については各ケースによるところが大きいものの、請求できるタイミングについては把握しておくとよいでしょう。
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