引越しをしたときには、社会保障制度のひとつである公的年金へ登録している住所の変更も忘れずに行わなければなりません。ただし、変更方法は年金の種類により異なるため、手続きの際は注意が必要です。この記事を参考に、自分が加入している年金を確認してスムーズな住所変更手続きを行いましょう。
目次
年金の種類は?
国民年金
国民年金は、日本国内に住んでいる満20歳以上60歳未満のすべての人が国籍に関係なく加入する年金です。国民年金加入者は、65歳になったら支払われる「老齢基礎年金」、ケガや病気で障害と認定されると支払われる「障害基礎年金」、死亡時に遺族に支払われる「遺族基礎年金」を受け取ることができます。加入者は「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」に分けられ、それぞれ保険料の支払い方法が異なります。
厚生年金
民間企業で働く会社員が加入する公的年金で、国民年金の基礎年金に上乗せして給付されるのが厚生年金です。保険料はそれぞれの収入に基づいて決定され、事業主と加入者が折半して保険料を支払います。年金額は、保険料を支払った期間によって決まります。厚生年金も国民年金と同じく「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」を受け取ることができ、支給が開始されるのは原則65歳です。
共済年金
共済年金には、国家公務員の加入する「国家公務員共済年金」と、地方公務員が加入する「地方公務員共済年金」、私立学校の教職員が加入する「私立学校教職員共済年金」があります。ただし共済年金は平成27年10月に厚生年金に統一されたため、現在は厚生年金の第2号被保険者(国家公務員)、第3号被保険者(地方公務員)、第4号被保険者(私立学校の教職員)という区分けになりました。
被保険者の種類は?
第1号被保険者(自営業者など)
第1号被保険者は、日本国内に居住している20歳以上60歳未満の自営業者、農業・漁業従事者、無職の人とその配偶者などを指します。学生やフリーターであっても、20歳になれば保険料の支払い義務が生じます。納付している期間が少ないと年金受給額も減ってしまうことになるため、20歳を過ぎたら市区町村の窓口できちんと加入手続きをしましょう。
保険料は、納付書による支払いや口座振替などの方法で納めることになります。免除や猶予の制度もあるため、保険料を支払うのが難しい人は市区町村の窓口で相談してみてください。
第2号被保険者(会社員)
厚生年金に加入している、65歳未満の会社員や公務員、私立学校の教職員を第2号被保険者といいます。保険料は給与からの天引きで支払われるため、自分で手続きをする必要はありません。天引きされた保険料の一部は、国民年金の拠出金にあてられます。そのため、厚生年金の加入者は自動的に国民年金へも加入することになります。
第3号被保険者(扶養の妻など)
第2位号被保険者の扶養となっている、20歳以上60歳未満の配偶者を第3号被保険者といいます。第3号被保険者は年収130万円未満の人が対象で、年収が130万円以上あり配偶者の扶養に入っていない人は第1号被保険者となります。第3号被保険者の国民年金保険料は配偶者の加入する年金制度によって一括で支払われるため、第3号被保険者本人に支払いの義務は生じません。
年金の種類別手続き方法
国民年金:自分で市役所にて手続き
国民年金加入者が引っ越しをしたときには、14日以内に新居がある市区町村の窓口で住所変更手続きを行います(同一市区町村内へ引越しをした場合であっても行う必要があります)。手続きには国民年金手帳、印鑑、本人確認書類が必要となるため、忘れずに持参してください。
本人が手続きに行けないときは、代理人が手続きを行うこともできます。本人の国民年金手帳、代理人の本人確認書類、代理人の印鑑に加えて、本人の自署押印のされた委任状が必要です。委任状には特に定められた様式はありませんが、日本年金機構のホームページからダウンロードして使用することもできます。
厚生年金:勤め先の企業を通して
厚生年金に加入している人は、窓口で住所変更手続きをする必要はありません。引越しをしたときには、速やかに勤め先へ住所変更の申し出をしてください。申し出を受けた事業主が「被保険者住所変更届」を日本年金機構に提出することで住所変更手続きは完了します。扶養家族がいる場合、扶養家族の分の住所変更も事業所を通して行うことができます。
共済年金:加入の共済組合を通して
平成23年以降、共済年金では住民基本ネットワークシステムを通して住所変更手続きを行うことができるようになりました。これにより、住所変更の手続きは原則として届け出不要となっています。ただし、以下の場合には加入している共済組合へ住所変更届けを提出する必要があるため、注意してください。
1.引っ越しに伴い、電話番号も変わったとき
2.日本から外国へ引っ越したとき、または外国で引越しをしたとき
3.日本に住んでいる外国籍の人が引越しをしたとき
4.平成23年9月以前に引越しをしたが、共済組合に届け出をしていなかったとき
5.平成23年10月以降に引越しをしたが、引越しから半年以上たっても郵便物の住所が更新されないとき
郵送やネットでの電子申請も可
市区町村の窓口に行けないという人は、郵送やインターネットで住所変更手続きをすることも可能です。郵送による手続きの有無や必要書類などは各市区町村により異なるため、事前に問い合わせてみてください。
インターネットで手続きをしたい人は、電子申請システム(e‐Gov)(※)へ登録する必要があります。利用を検討している人は、e‐Govホームページを確認しましょう。
※電子申請システムe‐Gov:各府省が管轄するさまざまな手続きの申請や届け出をネット上で行うことができるサービスです。パソコンとインターネット環境さえあれば、時間や場所を問わず手続きができるというメリットがあります。手数料などの納付は、インターネットバンキングなどを通じて行われます。
住所変更し忘れたらどうなる?
重要なお知らせを受け取れなくなる
実際に年金を受け取るのはまだ先であるにもかかわらず、住所変更手続きを急いで行う理由がわからないと感じる人もいるかもしれません。しかし、日本年金機構からは「ねんきん定期便」などの重要なお知らせが届くことがあります。郵便物を受け取れず年金の受給に不都合が発生した、という事態にならないよう、転居の際には速やかに住所変更を行うようにしてください。
受給の際に時間がかかる場合もある
年金の支給開始年齢3か月前には、必要事項があらかじめ印字された「年金請求書(事前送付用)」と「年金請求手続きのご案内」が本人宛に送付されます。年金を受給するには、それらの郵便物に書かれた指示に従い、受給開始の手続きを行わなければなりません。住所変更の手続きを行わないと、年金の受給に必要な書類が届かず、受給が遅れてしまうという可能性もあります。
年金手帳には変更が反映されない?
手帳に住所変更は記載されなくなった
年金手帳は、年金を支給された年代によって色が異なります。平成9年1月以降に支給された青色の年金手帳には、そもそも住所を記載する欄がありません。
平成8年12月以前に支給されたオレンジや茶色の年金手帳には、住所の記載欄があります。ただし、現在は役所が住所を記載することはなく、住所変更で年金手帳を提出しても住所欄は変更されずに返却されます。古い住所のまま使用しても構いませんが、新しい住所に変えたいときには自分で訂正するようにしてください。
まとめ
年金の住所変更を忘れると、年金受給をするときに速やかに手続きが進まないなどの事態が起きることがあります。年金受給者の人はもちろん、まだ年金を受給していない人も引っ越しの際には忘れずに住所変更をし、年金受給に関するトラブルを事前に防ぎましょう。