国民年金保険とは、自営業や個人事業を営む人などに加入が義務付けられている公的年金保険制度です。加入者が毎月支払っている保険料は前倒しで納めることも可能です。この記事では、保険料の前納によって得られるメリットや年末調整の必要性などについて解説します。
目次
国民年金保険料の前納制度とは
前納の期間と割引額
国民年金の保険料には、前納制度があります。この制度を利用する際に選択できる前納期間は、2年・1年・6ヶ月・当月末・翌月末の5通りです。
2年前納の場合は15,640円、1年前納は4,150円、6ヶ月は1,120円の割引が受けられます。当月末振替の場合にも50円の割引が受けられますが、翌月末振替へは割引の適用はありません。
国民年金の2年前納の手続き方法
口座振替で前納する場合
2年前納制度を利用する際の手続きは、次の通りです。まず、制度申し込みの期限は「毎年2月末まで」となっています。口座振替を希望する場合、「国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書兼国民年金保険料口座振替依頼書」という書類を記入し、口座を持っている金融機関や年金事務所の窓口へ提出します。書類の提出は郵送で行うことも可能です。
クレジットカードで前納する場合
クレジットカードを利用して前納制度を使用する場合には、「国民年金保険料クレジットカード納付(変更)申出書」を記入し、最寄りの年金事務所の窓口に持ち込みまたは郵送で提出します。口座振替・クレジットカードどちらの場合も、日本年金機構のホームページから申出書をダウンロードすることが可能です。
現金で前納する場合
現金支払いで保険料を前納する場合も、専用の申出書を記入・提出します。なお、「前納したい保険料の総額が30万円以上となる場合にはコンビニでの支払いができない」という点に注意してください。
国民年金の前納制度の注意点
申し込み期限がある
前納制度を利用する場合、申し込み期限内に手続きを行う必要があります。期日は毎年2月末に設定されていますが、手続きに必要な書類は手元に届くまでに時間が掛かる可能性があります。特に郵送で依頼する場合には数日を要することもあるため、制度の利用を検討している場合は早めに書類の請求を行いましょう。
普通の納付書では割引されない
国民年金保険料の納付書には、前納専用の納付書と通常の納付書の2種類があります。通常の納付書とは、滞納や免除などの理由で数ヶ月間保険料を支払っていなかった人が追納を行うために使用されるものです。
前納によって保険料の割引を受けるためには、通常のものではなく前納専用の納付書を使用する必要があります。通常の納付書では割引対象とならないため、注意が必要です。
引き落としできないと通常の金額
口座振替によって前納制度を利用する際、金額不足(引き落としの日付になっても支払う保険料以下の金額しか口座に入っていなかった、など)によって引き落としができない場合には割引も適用されません。後日、通常と同じ金額の保険料を支払うことになるため、前納による割引を利用したいと考えているのであれば、口座には余裕を持った金額を用意しておきましょう。
前納した場合の年末調整や確定申告は?
全額控除か2年に分けるか選択可能
国民年金保険料を年末調整の際に申告すると、全額が社会保険料控除の適用となります。社会保険料控除を受けると所得税の支払い金額が小さくなるというメリットがありますが、保険料を前納した際には、次のうちどちらかを選択して控除の範囲を決めることが可能です。
・全額をその年における控除の適用とする
・各年分に相当する保険料額を分割して控除の適用とする
前納を利用しない方がよいケースとは
再就職する予定がある
前納の制度を利用しないほうが良いと考えられるケースは主に2つあり、その1つ目は再就職の予定がある場合です。公的年金制度には原則として二重加入ができないため、再就職によって会社での厚生年金保険へ加入することになった場合、国民年金との重複分を確定申告で控除しなくてはならなくなります。
翌年の収入の大幅なアップが見込める
2つ目は、翌年に大幅な収入アップが期待できる場合です。所得税の税率は収入に比例して変動するため、翌年の収入が上がることが予想されている場合には税率も高まると考えられます。
社会保険料を年末調整で控除する場合、所得税率が高いほど大きな効果が得られます。そのため、収入アップが見込まれるのであれば、前納の制度は利用しない方が節税の効果が大きくなると言えます。
まとめ
前納制度を利用すると、国民年金保険料の割引が適用される場合があります。しかし、注意点や制度を利用しない方が良いと思われるケースなども存在するため、自分の状況を考慮しながら保険料の支払方法を検討しましょう。