親に国民年金などの収入があったとしても、条件によっては扶養に入れることがあります。親が扶養家族と認められると、社会保険の健康保険料がかからなくなり、扶養している本人の所得税や住民税の負担が減る可能性もあります。今回は扶養制度について税法上と社会保険の両方から解説します。
目次
所得税の扶養の基準
税法上、扶養家族にできる親族は「6親等内の血族と3親等内の姻族(配偶者の血族)」です。自分の親は1親等の血族、配偶者の親は1親等の姻族にあたります。生活を一にしていることが基本要件ですが、さらに扶養される人の収入について条件があります。
65歳未満の場合
扶養家族として認められるためには、「課税所得が38万円以下(基礎控除)」という条件があります。国民年金などの公的年金収入については「公的年金等控除」という非課税枠があるため、親の収入が年金のみであれば、38万円の基礎控除に公的年金等控除額を加算した額が収入の上限となります。親が65歳未満の場合、公的年金等控除額は70万円までです。
38万円(基礎控除)+70万円(公的年金等の非課税枠)=108万円
つまり親の収入が年金のみで年間108万円以下であれば、扶養家族の条件を満たすこととなります。
65歳以上の場合
65歳以上の公的年金等控除額は120万円までであるため、
38万円(基礎控除)+120万円(公的年金等控除額)=158万円
となり、扶養家族として認められるには親の収入が158万円以下である必要があります。ただし、年金以外の収入がある場合は対象外となるため、注意が必要です。
社会保険の扶養の基準
年齢は75歳未満が条件
75歳の誕生日を迎えると、後期高齢者医療制度に加入することになります。そのため、親の年齢が75歳以上となった場合は健康保険の扶養に入ることはできません。
また、「65歳以上で一定の障がいがあり、認定を受けたうえで後期高齢者医療制度の被保険者となっている場合」も扶養家族の対象外です。
扶養に入れられる親族
扶養に入れることができるのは、生計を一にしている配偶者(内縁関係も含む)と3親等内の親族です。具体的には、直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母)、直系卑属(子、孫、曾孫)に加えて、兄弟姉妹や叔父叔母、配偶者の甥姪なども含まれます。
親については、生計を一にしていれば同居・別居を問わず扶養に入れることが可能ですが、収入面で条件があります。税法上の計算では控除される公的年金や失業保険などの給付金も収入とみなされるため、注意が必要です。
同居している場合の収入の条件
同居している親を扶養に入れたい場合、以下の条件をどちらも満たす必要があります。
・親の年間収入が130万円未満
(親が60歳以上もしくは障害厚生年金受給者である場合は年間収入が180万円未満)
・親の年間収入が被保険者(扶養する本人)の年間収入の半分より少ない
例えば扶養に入れたい親の年間収入が120万円でも、被保険者の年間収入が220万円である場合は、被保険者の年間収入の半分(110万円)を超えているため、扶養家族として認められません。
同居していない場合の収入の条件
同居していない親を扶養に入れたい場合の条件は以下のとおりです。
・親の年間収入が130万円未満
(親が60歳以上もしくは障害厚生年金受給者である場合は年間収入が180万円未満)
・親の年間収入が被保険者(扶養する本人)からの仕送り額より少ない
二つ目の条件が設定されているのは、「被保険者からの仕送り額よりも親の収入金額が多い場合は“被保険者に扶養されている”とはいえないため」という理由によるものです。
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所得税の手続き方法
所得税の手続きは、基本的に勤務先の年末調整の手続きに従って行います。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」へ扶養の有無を記入し、親の収入がわかる書類(課税(非課税)証明書・源泉徴収票など)を添付して提出します。そのほか、親族関係を確認するための戸籍謄本・住民票、親と同居していない場合は仕送り額のわかるものなどを必要に応じて準備する必要があります。
社会保険の手続き方法
社会保険の手続きは、加入している健康保険の事務局へ勤務先を通じて「被扶養者(異動)届」を提出します。申請は随時行うことができるため、親が扶養家族の認定条件を満たすことが確認できたら、扶養に入れたい旨を勤務先の担当部署に伝えましょう。
所得税の手続きと同様、親族関係や親の収入がわかる書類などを添付するのが一般的ですが、社会保険の扶養認定については、加入している健康保険によって条件や必要書類が異なります。不明な点は健康保険の事務局へ問い合わせてみましょう。
国民年金の受給者は扶養に入りやすい?
扶養に入れられるケースが多い
親の収入が国民年金のみである場合、扶養家族として認められるケースが多いと言えます。20~60歳の全期間にわたって国民年金保険料を納めた場合、65歳から受け取れる年金の満額は779,300円となり、税法上は控除額内であるため扶養に入れます。
社会保険については、扶養される親の収入条件を満たしていても、扶養する本人の収入や仕送り額によっては扶養家族として認められないこともあります。
まとめ
親に収入がある場合でも、扶養に入れることがあります。また、税法上と社会保険の扶養要件は異なるため、健康保険では被扶養者と認められなくても所得税を支払う上では扶養家族になれることもあります。親を扶養家族にすることで家計の節約につながる場合もあるため、年齢や収入などの条件を把握しておきましょう。