投資信託関連の用語で誤りやすいのが「基準価額」と「基準価格」です。正解は「基準価額」なのですが、一体何を表す言葉なのでしょうか?今回は、「基準価額」の意味や計算方法などについて解説します。
目次
「基準価格」?「基準価額」?
正しいのは「基準価額」
投資信託の値段を表す言葉として正しいのは「基準価額」であり、法令・自主規制機関等でも「基準価格」ではなく「基準価額」が用いられています。「基準価額」とは、簡単に言うと「投資信託の口数当たりの価値」のことを指します(詳しくは後述します)。
「基準価格」の「価格」は、株の取引などで、銘柄自体の値段を表すときに使用される「Price」にあたります。一方、基準価額は英語で「Net Asset Value」となり、資産を口数で割った価値(=Value)を表す別の用語であることがわかります。
1万口あたりの時価総額
投資信託の取引単位は「口」で表されます。投資信託の多くは基準価額を「1万口1万円」と設定していますが、その後の運用実績によって金額は変動します。
投資信託では株式や債券を時価評価し、配当や利息を加えたものを「総資産額」と言います。そこから信用報酬や運用経費などを差し引いたものが「総純資産」であり、総純資産を所有者の総口数で割ったものが「基準価額」となります。前述のように、日本国内では1万口1万円で開始されるケースが多いことから「1万口あたりの時価総額」と表現されることもあります。
基準価額の推移だけで比較できる?
需給関係は影響しない
基準価額が推移する主な理由として、「株式や債券の価格の変動」が考えられます。投資信託に組み入れられている株式の価格は日々変動しており、株式の価格が上がれば基準価額の上昇を促すことがあります。また、債券の金利が上昇すれば基準価額も下落する可能性が高くなります。
このように、基準価額は、銘柄の需要供給が直接的に価格へ影響する株式などとは異なる性質を持ったものであることがわかります。
分配金を出した直後は下がる
投資信託では分配金が出ると基準価額が減少する可能性があります。分配金の原資は総資産額に含まれており、分配金を払い出すことによって総資産額が減少するとみなされるためです。
分配金の支払い方法として多く用いられているのは「決算型」(毎月・隔月・3か月・1年等、決算時期に合わせたタイミングで払い出す方法)であり、受取方法としては、そのまま受け取る「分配金受取コース」と、分配金を再投資へまわす「分配金再投資コース」等があります。
基準価額が高いだけでは判断できない
上記のような点から、基準価額は受給の影響よりはタイミングによって変動するものであり、高いから良いとは一概に言えないことがわかります。分配金を毎月支払うコースでは基準価額が1年を通して低めとなる傾向があります。また、分配金が年に1回のコースだと、分配金の支払い前には基準価額自体が高くなる場合があります。
基準価額の数字だけで投資信託を比較するよりも、分配金がいつ・どれだけ支払われたか等の点を考慮して運用実績を判断すると良いでしょう。
基準価額の計算方法とは?
基準価額の算出は1日1回
投資信託の「基準価額」は1日に1回公表されており、この金額をもとに購入・換金等が行われます。市場の終了後、終値をもとにして運用会社や投資信託協会が算出します。
国内の株式を主な投資先にしている投資信託であれば、通常は取引所の終了時間後である15時から「基準価額」の計算が始まり、算出後に公表されます。
ブラインド方式で取引後に公表
投資信託では、既存の投資家と平等に取引するために「ブラインド方式」で運用を開始します。「ブラインド方式」とは、「基準価額」が決まっていない段階で運用を開始する方法で、投資信託協会では、受付日の15時が締め切りとされています。締め切りは販売先で違う場合があるため、申し込み時には確認を行ってください。
基準価額の計算式
基準価格が「総純資産を所有者の総口数で割る」という方法で算出されることはすでに紹介しましたが、これを計算式にすると以下ようになります。
( 時価資産額 + 利息、配当等 - 運用コスト) / 総口数 = 基準価額
※1口が1円の場合は1万口当たりの価額、1口が1万円の場合は1口あたりの価額となります。
基準価額の計算例
1口1円で開始した投資信託において、1万口を10名が購入し運用した結果、時価資産額が11万円、利息等が2万円、経費が1万円であると想定して基準価額を計算してみましょう。
(11万円+2万円-1万円)/1万口×10名
= 12万円/10万口=1.2
※1口が1.2円であるため、1万口(1人あたり)では1万2千円
この場合は税引き前の単純計算となりますが、1人当たり2千円の利益が出たことになります。
投資信託の基準価額を知るには?
運用会社や販売会社のホームページ
多くの運用会社や販売会社では、自社のホームページで「基準価額」を公表しています。「基準価額」以外にも、募集要項・費用などを記載した「目論見書」を発表している企業もあります。
販売会社とは投資信託の販売業務を行う会社のことで、証券会社や登録金融機関などもその一種です。投資家の取引の窓口になっており、やはり「基準価額」や「目論見書」などを公表しています。
投資信託協会のホームページ
投資信託協会は「認定金融商品取引業者」の一つで、多くの運用会社や証券会社、銀行などが加盟しています。金融商品取引法で認定されており、投資運用業などの健全な発展や、投資者の保護を目的として運営されています。
投資信託協会のホームページでは、検索によって「基準価額」の確認ができるだけでなく、新設定された投資信託のチェックなども可能です。
日刊新聞
追加型の株式投資信託の「基準価額」は、日刊新聞にも掲載があります。新聞会社によって掲載には一定の基準があり、時価総額が上位の投資信託などが載っている場合もあります。
日刊新聞は毎日発行されるため、前日の「基準価額」の確認などに適していますが、掲載名称が略式となっている場合があります。また、「基準価額」ではなく「基準価格」と表示されているケースもあります。
まとめ
投資信託は「基準価額」で運用実績が表示される金融商品ですが、金額の高低だけで推移を判断できない場合もあります。「基準価額」の仕組みを把握し、分配金の支払いタイミングなども確認しながら資産運用を行いましょう。