投資信託を換金する際には、「解約」と「買取」のどちらかを選ばなければなりません。そこでこの記事では、「解約」と「買取」の違いを中心に、投資信託の換金について解説します。スムーズに手続きができるよう、参考にしてみてください。
目次
「解約請求」と「買取請求」の違いって?
解約請求
投資信託の換金方法の1つ目が、「解約請求」です。投資家が投資信託の解約請求を行った場合、販売会社(証券会社や銀行)は取り次ぎを行うだけで、実際の解約代金は運用会社が支払います。投資信託に余剰金があるときにはそこから解約代金が支払われますが、余剰金が不足している場合は投資信託の資産を売却して資金を調達し、投資家へ解約代金を支払います。
買取請求
投資信託の換金方法の2つ目は、「買取請求」です。買取請求の際は、販売会社が投資信託の買取を行い、投資家へ買取代金を支払います。そのため、投資信託の受益証券は投資家から販売会社へ渡ることとなります。販売会社側で資金が必要となった際には、後日改めて運用会社に解約請求を行い、投資信託を換金する必要があります。
税金や受取額は同じ
解約・買取請求のどちらを選んでも、受取額は基本的に変わりません。また、以前は買取と解約には税制上の違いが存在しましたが、平成21年1月1日以降は撤廃されました。平成24年以降に買取および解約を行い譲渡益が出た場合には、譲渡所得として20.315%の税金が課せられることになっています。
一般口座もしくは源泉徴収なしの特定口座を使用している人は、譲渡益が出たときには確定申告を行わなければなりません。源泉徴収ありの特定口座を選択している人は、譲渡益からあらかじめ源泉徴収されるため、原則として確定申告の必要はありません。
投資信託の解約はいつでも可能?
原則としていつでも解約可能
投資信託は、原則としていつでも解約をすることが可能です。解約をする場合は、販売会社の窓口もしくはコールセンター、インターネットサービスなどで手続きをしましょう。
解約によって受け取れる金額は、解約請求時点では確定していません。解約申込の締め切り時間や、算出の元となる基準価額の計算タイミング・適用タイミングなどが投資信託によって異なるためです。解約請求時に試算した金額と、実際に支払われる金額には差異が生じることもあるという点には注意が必要です。
クローズド期間のある商品も
クローズド期間とは、投資信託の解約が禁止された期間のことを言い、発売後間もない(3カ月~1年程度)商品などに設定されることがあります。ただし、目論見書(投資信託の説明書)に定めた特別の理由に該当するときには、買取という形で換金できるケースも多くなっています。
換金できる特別な事由の例
・受益者が死亡したとき
・収益者が天災などにより、財産の大部分を失ったとき
・疾病により、生計の維持が困難となったとき
投資信託の解約方法
販売会社を通じて解約請求をする
投資信託の解約を希望するときには、まず販売会社へ解約の請求を行いましょう。解約の請求を受けた販売会社は、運用会社にその取り次ぎを行います。販売会社から連絡を受けた運用会社が投資家に解約金を支払えば、解約の手続きは終了です。
ちなみに、投資信託は預貯金とは異なり、「即時換金することはできない」という留意点があります。
入金までの期間
解約金が入金されるのは、解約の申し込みから3日後以降です。入金までの具体的な所要日数は投資信託や販売会社により異なるため、あらかじめ目論見書で確認しておくようにしましょう。
また、投資信託の解約が受け付けられるのは、原則として営業日の15時までです。休日や、営業日の15時以降の申し込みの場合は、翌営業日の取り扱いとなるため、入金日がずれる可能性があることを覚えておいてください。
解約時に適用される基準価格は、当日もしくは翌日に算出されます。どの時点の基準価格が適用されるかは投資信託により異なるため、解約時にはきちんと確認しましょう。
解約に手数料がかかる商品も
解約時に掛かる手数料は、「信託財産留保額」です。信託財産留保額を設けることにより、短期間における頻繁な売買を防ぎ、安定した運用を維持するという狙いがあります。信託財産留保額は、解約金から差し引かれる形で支払われます。
信託財産留保額は、投資信託によって金額が異なります。また、投資信託によっては信託財産留保額が無いものもあるため、目論見書で確認してください。
投資信託を解約するタイミングは?
投資信託は長期保有が基本
投資信託は長期の運用が基本となります。なぜなら、長期保有によって複利の効果をより引き出すことができるためです。分配金を再投資し、複利でじっくりと運用していくことで、より効率的に資産を増やすことが可能となる場合があります。
また投資信託には、売買時に手数料などのコストがかかります。長期間保有することで売買の回数を減らし、手数料の負担を軽くするという効果もあります。
目的を達成したときに解約を検討
長期保有が基本の投資信託ですが、購入時の目標を達成したタイミングで解約するというのはひとつの選択肢と言えます。保有し続けることも可能ですが、運用成績によっては利益が減少してしまうことも考えられるためです。解約に踏み切る時期を見極めることは難しいかもしれませんが、目的の金額に達したときには一度解約を検討してみてもよいかもしれません。
リバランスは検討するべき
設定した目標額に達していなくても、投資信託を解約する必要があるときがあります。それは、リバランス(資産の再分配)をするときです。
投資信託を始めるときには、資産状況やリスク許容度によってポートフォリオ(投資額のうち、どの資産にどのくらいの割合を投資するかといった資産配分)を作成します。しかし、運用中の損益によってポートフォリオが崩れることも考えられます。そのような際、ポートフォリオを修正するために「投資信託の解約」という形でリバランスを行う場合もあります。
また、以下のような場合も投資信託の解約を検討した方がよいタイミングといわれます。
・投資信託の純資産残高が急激に減少した、もしくは長期間減少を続けているとき
・投資信託の運用方針に変更があったとき
・類似のファンドに比べて、著しく運用成績が悪いとき
保険での運用も選択肢のひとつ
保険の中には、積立金を運用して資産作りを目指すことのできる、貯蓄性の高い商品があります。具体的には、終身保険や個人年金、学資保険などです。
積立金の運用先は、商品によって異なります。比較的リスクが低いといわれる債券だけでなく、株式や外貨で運用している商品もあります。中には、投資信託と同じくファンドでの運用ができる保険もあるので、いくつかの商品を見比べてみると良いでしょう。
保険を資産運用に利用する場合の注意点は、長期投資が可能な資金の範囲内で契約するということです。保険の場合、契約期間中に解約をしてしまうと元本割れする商品もあります。そのため、急に現金が必要となったときにも保険を解約せずに済む資金で始めるようにしましょう。
まとめ
解約時に「買取」と「解約」のどちらを選んでも、受け取る金額にさほど大きな違いはありません。投資信託の換金には3日以上の日数を要するため、資金が必要なときは早めに手続きを進めるようにしましょう。投資信託は、購入と同じくらい解約のタイミングも重要です。解約をするべきかどうか悩んでいる人は、証券会社や銀行の窓口などへ相談してみるのもよいでしょう。