投資信託は、預貯金とは違って元本割れの可能性がある運用商品です。この記事では、投資信託のリスクを抑えて運用していくコツを紹介します。今後の参考にしてみてください。
目次
投資信託で損をしがちな人の特徴
同じ資産クラスの商品ばかりに投資
リスクを抑えた投資の基本は、分散投資をすることです。分散投資とは、資金の全てを1つの資産や商品に投資するのではなく、複数に分けることでリスクの分散を図る投資方法です。
投資信託は、商品によって投資先の資産が異なります。分散投資を目指すのであれば、国内外の債券・株・REIT(不動産)など、できるだけ異なる種類の投資信託を保有した方が良いでしょう。自分一人で分散投資をするのは難しいという人は、複数の資産に投資をしている「バランス型ファンド」を利用するという方法もあります。
分配金で投資商品を選ぶ
投資信託には、分配金が支払われるものがあります。分配金は生活費やお小遣いなどとして利用することもできるため、分配金の金額に着目して投資信託を選ぶ人もいるようです。
分配金の出る投資信託を購入する際に気を付ける点は、「運用益のみで分配金が支払われているとは限らない」ということです。商品によっては、投資信託の資産を切り崩して分配金を支払っているケースもあります。
分配金が支払われる投資信託を選ぶときには、基準価額や純資産総額の推移を良く確認してください。どちらも減り続けているようであれば、資産を減らしながら分配金を支払っていると考えられるためです。
基準価額だけで判断する
基準価額は投資信託の時価を表すもので、純資産総額を口数で割ることで算出します。一般的に、投資信託は1万口当たり1万円の基準価額からスタートするものが多いため、1万円より基準価額が上がっていれば割高、下がっていれば割安と判断する人もいるでしょう。
しかし、基準価額は運用成績のみで上下するわけではありません。例えば前述の通り、資産を切り崩して分配金を支払ったことによって、基準価額が下がることもあります。この場合は基準価額が割安になったわけではなく、純資産高が減ったため基準価額が下がったにすぎないということになります。
テーマ型の商品ばかりを選ぶ
テーマ型の投資信託とは、特定のテーマに関連した企業を投資対象として運用する商品です。環境関連企業やBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)を投資対象とするテーマ型の投資信託が発売されたこともありました。現在では、発展性や成長力があるとみなされ、ロボットやIT産業を対象とした投資信託が注目される傾向にあります。
テーマ型投資信託は、世間に着目されているときには資金調達や運用成績の拡大をしやすいかもしれません。しかし、時間の経過とともに新しい資金の流入やファンド維持が困難となる可能性があります。場合によっては運用の継続が難しくなり、繰り上げ償還されることもあるようです。
新商品に偏って購入を行う
投資信託を選ぶときに重要なのは、過去の運用実績を確認することです。発売されてから一定期間が経過した投資信託は、たとえ運用実績が良くても注目度が下がる傾向があります。一方新商品は、広告や販売会社からの紹介などによって多くの情報が入ってくるため、目に留まりやすいと言えます。
新商品は投資信託のスタートから運用に関われる反面、運用実績やリスクが不透明な面があります。安定的な資産の運用を目指すのであれば、すでに十分な運用実績のある投資信託を選んだほうが良いかもしれません。
仕組みが複雑な商品を購入する
仕組みが複雑で分かりにくい投資信託は、運用が難しいとされています。仕組みが入り組んでいる分だけ値動きの予想も難しく、売買のタイミングをつかみにくいことが多いためです。
例えば通貨選択型投資信託を見てみましょう。こちらは投資対象資産(株や債券)に加えて、投資対象の通貨も選択することができる投資信託です。投資している資産の値動きのほか為替による損益が出る可能性もあるため、ハイリスク・ハイリターンと言えます。
純資産高を見ない
投資信託の「純資産高」は、その投資信託の規模を表す大切な指標です。純資産高が順調に伸びていれば、新しい資金の流入が多いこと・運用が順調であることなどが推測されるためです。
投資信託の純資産高が減っている場合には、運用成績が悪いだけでなく、解約による資金の流出が起きている可能性があります。また、分配金を払い出すために純資産を切り崩していることなども考えられます。
いずれにしても、純資産残高の減少が運用会社の目指す運用(分散投資など)を困難とすることもあるため、以降の成績が振るわないという事態も想定しておいた方がよいでしょう。
購入手数料を気にかけない
投資信託は、購入時・保有時・解約時などに手数料がかかります。手数料の支払いは必要経費なので仕方がない、と考える人もいるかもしれません。しかし、投資家にとって手数料は「コスト」であるということを良く覚えておく必要があります。
例えば、購入時手数料3%の投資信託を100万円購入したとします。その場合の手数料額は3万円です。つまり運用は97万円からスタートとなり、少なくとも3万円の利益が出なければ元本割れとなってしまうのです。
手数料の有無や金額は、投資信託によって異なります。購入時手数料の掛からない「ノーロード投信」などもあるため、購入の際に検討へ入れてみるのも良いでしょう。
投資信託で損をしないコツ
目論見書を理解する
「目論見書」とは、投資信託についての重要事項が記された説明書です。投資信託購入時に投資家へ渡されるため、内容を理解したうえで投資判断をすることが必要です。目論見書に記載されている主な内容は以下の通りです。
・ファンドの目的・特徴
・リスク
・運用実績
・手続・手数料
目論見書は販売会社の窓口で受け取る以外にも、インターネットからダウンロードする方法もあります。
資産クラスを分散する
分散投資をしたいときには、まず投資対象によって資金を分けます。具体的には、株式と債券、コモディティ(金属類や農産物、穀物といった商品)などが挙げられます。次に、投資先(国内、外国、新興国など)を分散させます。これらを踏まえ、資産・場所などが重複しないように投資を行うことが大切です。
投資信託で分散投資を図るには、バランス型投信を選ぶか、複数の投資信託へ投資を行う必要があります。また、自分で分散投資をするのが難しいと感じる人は、保険商品を活用するという選択肢もあります。
生命保険のひとつである変額保険は、ファンドによって積立金を運用しています。安定成長を狙って設定されたファンドの中から、任意のものを選んで運用することができるため、比較的分散投資がしやすい方法と言えるかもしれません。
ノーロード投信を選ぶ
投資信託の手数料のうち、購入時手数料が無い投資信託を「ノーロード投信」といいます。ノーロード投信であれば、手数料を引かれることなく運用をスタートできるため、初期のコストを抑えて投資をすることができます。
ノーロード投信は販売会社の窓口で販売されていることもありますが、インターネット証券での取り扱いのほうが多くなっています。ノーロード投信に興味のある人は、インターネット証券のホームページを確認してみましょう。
投資信託で損したときの確定申告
確定申告が必要なケース
投資信託で売却益が出た際には、20.315%の税金がかかります。以下のような場合、確定申告を行う必要があるため、覚えておきましょう。
1.投資信託を一般口座もしくは特定口座(源泉徴収なし)で取り引きし、売却益がでたとき
2.年間の給与収入額が2,000万円以下で投資信託の譲渡益が20万円以下であった(※この場合、税金を支払う必要はありません)が、特定口座から源泉徴収されたとき
3.損益を翌年以降に繰り越したいとき
4.投資信託の口座を複数保有していて、その損益を通算したいとき
損をしたら確定申告が得
年間の投資信託の売却益がマイナスのときには、確定申告をすると税金が抑えられることがあります。なぜなら投資信託で売却益が出たときには、損失と相殺することができる損益通算があるからです。
1年間の投資信託の売却益がマイナスで通算する売却益もなかった場合、確定申告をすると以降3年間に渡り損失を繰り越すことができます。今年の売却損が10万円だったと仮定して確定申告を行うと、来年30万円の売却益が出た場合でも損益通算によって課税対象額を20万円とすることが可能です。
また、複数の販売会社で口座を保有している場合も、損益を通算することができます。例えば、A証券では売却益が20万円、B銀行では売却損が5万円あったとすると、損益が通算されて課税額を15万円に抑えることができます。
損益通算ができる範囲
損益通算は、売買損益だけでなく分配金や配当、利子も通算できます。ただし損益通算には、同じ種類もしくは類似金融商品間で生じた損益しか通算できない、という決まりがあるため注意しましょう。ちなみにFXや商品先物取引などは、投資信託との損益通算はできません。
投資信託と損益通算できる商品例
・株式
・公社債投信(MMF/MRFなど)
・国債
・外債
・社債
・REIT
まとめ
リスクの分散方法やコストについての知識を持っているかどうかが、投資信託を運用する上でのポイントと言えます。これから投資信託を始めるという人は、少額からスタートし、仕組みやコツを学びながら少しずつ投資額を増やしていくと良いでしょう。既に投資信託を保有している人は、投資先・投資方法などの見直しを適宜検討してみてください。