遺産相続トラブルは、遺産の多少にかかわらず起こる可能性があります。今回は遺産相続トラブルの例や、トラブルが起こってしまったときの対処法などについて紹介します。
目次
遺産相続トラブルの原因って?
預金や土地に関する相続問題
遺産相続の対象になるものとして、預貯金などの現金や車などがあります。その中でもトラブルに発展しやすい傾向にあるのが「不動産」です。
その理由として、不動産は分け方が複雑であるという点が挙げられます。現金などであれば法定相続分に応じて分けることが可能ですが、不動産は分割しにくいため、法定相続分に従って分けるのが難しい財産であると言えます。さらに、遺産分割における評価方法が「時価」であるため、明確な価格をつけることが困難であるという一面もあります。
相続財産や相続人が明らかでない場合
相続財産がどのくらいあるのかが不明であるためにトラブルが起こるというケースも見られます。相続財産のすべてが明らかになっていないことを理由に相続人同士が疑心暗鬼となり、相続争いに発展することがあります。
また、相続人が誰なのかが不明である場合もトラブルにつながることがあります。故人の養子縁組などを報告されておらず、自身の知らない相続人が現れる可能性もあるためです。トラブルにならないためには、相続財産や相続人をはっきりさせておくことが大切です。
生前贈与が行われている場合
生前贈与が行われている場合も注意が必要です。生前贈与とは、被相続人が生存している間に特定の相続人へ財産を贈与することを言います。
不公平が起こらないように、生前贈与の財産も遺産に含めて計算が行われます。この時、
・どの財産が生前贈与に該当するのか
・どのように財産を評価するのか
という点がトラブルの原因となりやすいポイントです。
例えば、特定の相続人に不動産を生前贈与したとします。まず、生前贈与した不動産の評価がいくらなのかということが問題となり、相続人が「不動産の代金を支払ったから贈与ではない」と生前贈与を否定してトラブルに発展するケースなども想定されます。
家族・親戚間の遺産相続トラブル事例
相続で揉める家族の特徴
相続で揉める家族の例をいくつか挙げてみましょう。
例えば、親と同居していた相続人がいる場合です。親と同居していた相続人は、親の事業を手伝ったり親の介護をしたりするケースが多く、「親に貢献した分、自分の遺産相続分を増やしてほしい」と主張することがあります。
しかし、同居していない相続人は「生活費を出してもらっていたのだから介護をしたり事業を手伝ったりするのは当たり前ではないか」と考え、同居していた相続人の法定相続分が増額されることに納得できないことがあるかもしれません。
次に、子どもがいない夫婦です。子どもがいない夫婦の場合、法定相続人は「配偶者と親」です。親が亡くなっていれば、配偶者と被相続人の兄弟姉妹が法定相続人になります。配偶者と親の仲が悪かった場合や被相続人の兄弟姉妹と疎遠である場合、スムーズに遺産分割を進めることが難しいケースが考えられます。
兄弟間の遺産分割が偏っている
相続トラブルを避けるためには、遺言書が有効です。遺産内容を明らかにしたり、遺産分割の配分を指示したりすることができるためです。ただし、トラブルを防ぐために用意したはずの遺言書の内容に偏りがあると争いの原因になることもあるため注意が必要です。
例えば、兄弟の親が亡くなり、「兄だけに多くの遺産を渡す」という不平等な遺言を遺したとします。遺産には「遺留分(最低限もらえる割合)」というものが設けられているため、それを取り戻すための「遺留分減殺請求」などが起き、相続トラブルが悪化することもあるかもしれません。
内縁の妻や隠し子がいる
被相続人に内縁の妻や子どもがいた場合も、揉め事になりやすいケースと言えます。たとえ普通の夫婦と同じように暮らし、共同で財産を作ったとしても、内縁の妻には相続権がないため、財産は法定相続人のものとなってしまいます。被相続人と正妻との間に子どもがいた場合、内縁の妻と子どもをめぐってトラブルに発展することもあります。
認知した隠し子がいたり、前妻との間の子どもがいたりする場合も同様です。亡くなった時点では新しい家族と暮らしていても、相続開始時に隠し子や前妻の子どもの存在が発覚すると、それぞれの家族間で争いが起こりやすくなります。
行方不明の相続人がいる状態で財産分与を進めてしまった場合なども、後に行方不明の相続人が発見された時にトラブルになることが考えられるため、注意が必要なケースです。
調停や裁判に発展してしまうことも
遺産分割調停とは
遺産分割調停とは「相続人間で話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所が間に入って遺産分割をすること」を言い、3カ月から1年以上の期間が見込まれます。まず、遺産分割調停申立書と必要資料を作成して管轄の家庭裁判所に申し立てを行います。調停期日には弁護士と共に出席し、調停委員を交えて話し合うことになります。
調停でも解決できなければ裁判へ
遺産分割調停でも解決できない場合、「遺産分割審判」という手続きを行うことになります。遺産分割調停は当事者同士の話し合いですが、遺産分割審判では裁判官が事実調査や証拠調べをして遺産分割の方法を決め、裁判所が判断を下します。さらに、遺産分割審判でも解決できないときには裁判に移行し、高等裁判所で争うことになります。
トラブルや争いを防ぐためには?
兄弟・親戚とは日頃から連絡を
トラブルや争いを防ぐためには、兄弟姉妹や親戚と日頃から連絡を取り合っておくことが大切になります。相続開始前に疎遠になってしまうと遺産分割の話し合いがスムーズにいかず、トラブルが起きてしまう場合もあります。連絡を取り合っていればお互い不信感を持ちにくく、相手を思いやることにもつながります。
トラブルが起きたら弁護士へ相談
遺言書の作成がトラブルを防ぐ対策であることは前述の通りですが、遺言書の内容にも配慮をしておかなければ、新たなトラブルの原因ともなりかねません。そのため、料金はかかるかもしれませんが、遺言書の作成にあたっては弁護士へ相談するとよいでしょう。
また、実際に相続問題が起きてしまったときも弁護士へ相談してみましょう。弁護士は法律のプロであり、様々なトラブルにも対応してくれます。トラブルは長引くほど冷静な話し合いが難しくなることも考えられるため、なるべく早い段階で相談してみるのがよいでしょう。
まとめ
今回は、遺産相続トラブルについて取り上げました。例に挙げた場合以外にも様々なケースがあります。相続問題は感情的になりやすく、一度揉めると自分たちだけで解決するのが難しいという一面もあります。トラブルが起きてしまったときは、弁護士などの専門家に相談し、早期解決を図りましょう。