年金保険料の未納期間があると、受給額が減る可能性があります。そのような事態を防ぐため、支払いができなかった保険料については追納や後納ができる制度があります。今回は年金保険料の未納の対応策として、追納や後納のメリットや注意点を解説します。
目次
年金を追納・後納するメリットは?
年末調整で節税ができる
過去に年金の保険料の未払いがあっても、後から納める方法があります。その一つが「追納」で、保険料の払込を免除・猶予された分を納める方法です。一方「後納」は、未払いだった保険料を後から納める方法です。年末調整の際に追納・後納した年金保険料を申告すれば所得の控除が受けられ、節税につながります。
国民年金受給額が増える
未払いの年金保険料を追納・後納した期間については「保険料納付済期間」とみなされます。未納期間が減ることにより、受け取ることができる年金額が増えることになります。
また、年金保険料の納付期間が老齢年金の受給資格となる10年を下回る場合でも、後納によって10年を超えれば老齢年金の受給資格を得られる可能性もあります。
年金の追納方法と手順
1. 国民年金後納保険料納付申込書に必要事項を記載する
国民年金保険料の追納方法ですが、最初に「国民年金後納保険料納付申込書」へ基礎年金番号・生年月日・申請する期間などを記入します。
申込書は年金事務所から直接取り寄せるほか、日本年金機構のホームページからダウンロードすることも可能です。記入方法についても掲載例があるため、確認しながら書き込むことができます。
2. 年金事務所に提出する
「国民年金後納保険料納付申込書」へ必要事項を記入したら、最寄りの年金事務所や年金相談センターへ提出します。直接持ち込む場合はその場で記入内容を確認されるため、不備があれば訂正や追記をすることができます。
提出は郵送でも可能ですが、不備や誤りがあれば返送されます。書き直した後に再郵送をしなければならないため、審査や承認が遅れる場合もあります。
3. 審査・承認が行われる
「国民年金後納保険料納付申込書」が年金事務所に届くと、納付が可能かどうかの審査が行われます。納付が可能な期間や、受給資格の有無などの確認が完了すると、承認後に承認通知書・納付書・リーフレットが送付されてきます。
日本年金機構の発表によると、後納制度の申し込みは平成29年3月時点で193,113件あり、実際に後納を利用した人は175,740人となっています。
4. 金融機関やコンビニで保険料を納付する
送付された年金保険料の納付書には追納可能な保険料の金額が掲載されており、銀行や郵便局・提携コンビニエンスストアで納めることができます。そのほか、Pay-easyに対応しているATMや、インターネットバンキングでも納付が可能です。
年金事務所や市役所・町村役場の窓口では納付することができない点、口座振替やクレジットカードには対応していない点に注意が必要です。
年金を追納する際の注意点
追納が可能な条件
年金の追納には条件があり、「申請が承認された月より前の10年以内」の期間が対象になります。後納では「納付期限から2年以内の未納の年金保険料」を納付できますが、2年を経過すると追納ができなります。
そのため、平成27年10月1日から平成30年3月までは、「5年の後納制度」が実施されています。この期間であれば5年前までの未納年金保険料を納めることが可能です。
後納制度が利用できるのは以下の3通りのケースです。
・20歳以上60歳未満で5年以内に免除以外の未納期間がある場合
・60歳以上65歳未満で任意加入中に未納がある場合
・65歳以上で老齢年金の受給権を持たずに加入している場合
遡る期間が長くなるほど加算額が増える
年金保険料の未納が長期間に及ぶ場合、遡って追納できる期間が長いほど「納付済」とみなされる期間も長くなり、将来受け取る老齢年金の加算額が増えることになります。
日本年金機構の発表では、後納制度の利用によって増額される老齢基礎年金は、平均して11,433円とのことです(平成29年3月時点)。1か月分の保険料を後納すると、年額が1,624円増える計算になります。
分割で納付も可能
保険料を一括で後納することがむずかしい場合は、分割での納付も可能です。後納保険料の分割払いは1か月を単位としており、支払いが可能な単位で年金事務所などの窓口に申請することができます。
月単位の納付書には「納付期限」と「使用期限」があります。「納付期限」は翌月末、「使用期限」は2年後に設定されています。保険料を何か月分かまとめて支払いたい場合、納付書の使用期限内であれば一度に複数枚使用することが可能です。
申し込みには余裕を持つ
後納や追納は納付できる期間に制限があるため、余裕をもって申し込むことが必要です。申請した年月日が期限内であっても、審査に時間がかかって期限切れとなってしまう可能性もあります。
過去の5年分まで遡って年金保険料を納められるのは、平成30年9月までとなっています(平成30年3月現在)。不明な点は「年金加入者ダイヤル」0570-003-004で確認してください。
当時の保険料額では納められない
後納制度によって納めることができる保険料は、未納なく納めてきた加入者や、「10年の後納制度」(平成27年3月で終了)によって保険料を納めた加入者との公平性を保つために、当時の保険料へ一定の率が加算された金額となります。
納付申請した年度から3年度より前の保険料には、利子の相当分として「10年国債」の表面利率に基づく利率と、既定の加算額が追加されます。
古い分からの納付になる
後納制度を利用する際、未納保険料の納付順には決まりがあり、先に経過した月から納めることになっています。後納制度では3年以内の後納保険料には加算がない場合もありますが、新しい未納月の保険料から支払うことには対応していません。
まとめ
年金保険料を払い忘れていても、後から納めることによって、年金の受給権を持つことができたり、年金の受給額を増額できたりする可能性があります。後納や追納の保険料支払いには期限があるため、なるべく早く申請を行いましょう。