国民健康保険に「扶養」という仕組みはありません。会社員の健康保険(社会保険)では、配偶者や子どもを扶養に入れれば追加の保険料はかかりませんが、国民健康保険では加入者一人ひとりに保険料が発生します。専業主婦でも、収入のない子どもでも同じです。
ただし「扶養がない=何の配慮もない」わけではなく、未就学児の保険料を半額にする軽減や、出産前後の免除といった制度が用意されています。また、社会保険の扶養から外れる基準そのものが、いま大きく変わろうとしています。この記事では、その両方を整理します。
国民健康保険に「扶養」はない
まず、社会保険との違いをはっきりさせておきます。
| 社会保険(会社員) | 国民健康保険 | |
|---|---|---|
| 扶養の仕組み | あり | なし |
| 家族が増えたときの保険料 | 変わらない | 人数分だけ増える |
| 保険料の負担 | 会社と折半 | 全額自己負担 |
| 保険料の決まり方 | 本人の給与(標準報酬月額) | 世帯の所得・加入人数・自治体 |
| 納付義務者 | 本人 | 世帯主(世帯主が国保に入っていなくても) |
見落とされやすいのが最後の行です。国民健康保険料の納付義務は「世帯主」にあります。世帯主自身が会社の健康保険に入っていて国保の被保険者でない場合でも、同じ世帯に国保加入者がいれば、世帯主あてに納付通知書が届きます(擬制世帯主といいます)。
なぜ人数分かかるのか
国民健康保険料は、大きく分けて所得割(所得に応じた額)と均等割(加入者1人あたり定額)で構成されます。この均等割があるため、収入がゼロの家族が加入しても保険料が発生します。
計算の詳しい仕組みは国民健康保険料の計算方法で解説しています。
「扶養がない」代わりに用意されている軽減制度
子どもや出産に関しては、国が全国一律で軽減措置を設けています。申請不要で自動的に適用されるものと、届出が必要なものがあります。
未就学児は均等割が5割軽減される
令和4年4月から、未就学児(小学校入学前の子ども)の均等割保険料は5割が公費で軽減されています。
さらに、低所得世帯向けの軽減(7割・5割・2割)に該当する世帯では、軽減後の額からさらに5割が引かれます。組み合わせると次のようになります。
| 世帯の軽減区分 | 未就学児の均等割の軽減率 |
|---|---|
| 7割軽減の世帯 | 8.5割軽減 |
| 5割軽減の世帯 | 7.5割軽減 |
| 2割軽減の世帯 | 6割軽減 |
| 軽減なしの世帯 | 5割軽減 |
産前産後期間は保険料が免除される
出産する国民健康保険の被保険者は、出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間の保険料が軽減されます。多胎妊娠の場合は3か月前から6か月間です。
この制度は届出が必要です。自動的には適用されないため、出産予定日の6か月前から市区町村の窓口で手続きしてください。
扶養がない国保で家族の保険料が重い方へ|家計の見直しをFPに無料で相談【重要】社会保険の扶養に入る基準が変わります
「扶養から外れると国保に入ることになる」ため、その基準を知っておく必要があります。ここが2026年に大きく動いています。
130万円の壁:2026年4月に判定方法が変わった
年収が130万円以上になると、家族の社会保険の扶養から外れ、自分で健康保険に加入することになります。この基準額そのものは変わりません。
変わったのは判定の方法です。2026年4月1日から、扶養認定における年間収入は、労働条件通知書などに記載された「契約上の基本収入」で判断されるようになりました。それまでは残業代を含めた見込み額で判定されていたため、一時的な残業で扶養を外れてしまうケースが減ります。
106万円の壁:撤廃が決まっている
これまで、一定規模以上の企業で働く短時間労働者は、月額賃金8.8万円(年収約106万円)以上で社会保険の加入対象になっていました。いわゆる「106万円の壁」です。
2025年6月に成立した年金制度改正法により、この賃金要件は撤廃されることが決まりました。撤廃後は、週の所定労働時間が20時間以上かどうかだけが基準になります。
ただし施行時期については、注意が必要です。厚生労働省は「法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断」としており、日付が固定されているわけではありません。「2026年10月から」と断定している解説を見かけますが、正確ではありません。
| これまで | 賃金要件の撤廃後 | |
|---|---|---|
| 労働時間 | 週20時間以上 | 週20時間以上(変わらず) |
| 賃金 | 月8.8万円以上 | 要件そのものが廃止 |
| 企業規模 | 従業員数の要件あり | 10年かけて段階的に撤廃 |
働き方を調整している方への影響は小さくありません。「年収を106万円以下に抑える」という考え方が意味を持たなくなり、代わりに「週20時間未満に抑えるかどうか」が判断軸になります。ご自身の勤務先の企業規模と、契約上の労働時間を確認しておいてください。
退職したら国保と任意継続、どちらを選ぶか
会社を辞めると、扶養に入っていた家族も含めて全員が国民健康保険に入ることになり、保険料が大きく増えるのが一般的です。会社が折半していた分がなくなり、さらに家族の人数分の均等割が加わるためです。
ただし選択肢は国保だけではありません。
| 選択肢 | 内容 | 検討ポイント |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | 市区町村に加入 | 扶養がないため家族の人数分かかる |
| 任意継続 | 退職前の健康保険を最長2年継続 | 扶養の仕組みが使える。ただし保険料は全額自己負担 |
| 家族の扶養に入る | 配偶者などの社会保険へ | 収入要件を満たせば保険料の負担なし |
扶養家族が多い方ほど、任意継続が有利になりやすいのがポイントです。国保では人数分の保険料がかかりますが、任意継続なら扶養の仕組みがそのまま使えるためです。
ただし任意継続の申請には退職日の翌日から20日以内という期限があります。迷っているうちに期限を過ぎると選べなくなるため、退職前に試算しておくことをおすすめします。詳しくは退職したら国民健康保険に加入?と国民健康保険への切り替えをご覧ください。
なお、会社都合の離職であれば国保の保険料が大幅に軽減される制度があります。該当する場合は国保のほうが安くなることもあるため、国民健康保険料が免除される条件もあわせて確認してください。
加入・脱退の手続きに必要なもの
手続きは住んでいる市区町村の窓口で行います。加入も脱退も、事由が発生した日から14日以内が原則です。
| 場面 | 主な必要書類 |
|---|---|
| 会社を退職したとき | 健康保険の資格喪失証明書、本人確認書類、マイナンバーが分かるもの |
| 会社に就職したとき(脱退) | 新しい健康保険の資格情報が分かるもの、国保の資格確認書 |
| 出産したとき | 母子健康手帳、世帯主の口座情報 |
| 転入・転出 | 転出証明書など |
なお2024年12月2日から、従来の健康保険証は新規発行が終了しています。現在はマイナ保険証、またはマイナ保険証を持たない方に交付される「資格確認書」で資格を確認します。手続きの際に「保険証を持参」と案内している古い情報が多く残っていますが、お手元にあるのは資格確認書である可能性が高いためご注意ください。
よくある質問
収入のない子どもの保険料も払うのですか?
はい。国民健康保険には扶養の仕組みがないため、均等割が人数分かかります。ただし未就学児については均等割が5割(低所得世帯はさらに軽減)軽減されます。
世帯主が会社員でも納付通知が来るのはなぜですか?
国民健康保険料の納付義務者は世帯主と定められているためです。世帯主本人が国保に加入していなくても、世帯内に加入者がいれば世帯主あてに通知が届きます。世帯主の保険料が発生しているわけではありません。
保険料が払えないときはどうすればいいですか?
放置せず、必ず市区町村に相談してください。分割納付や減免の相談ができます。滞納を続けた場合の取り扱いは国民健康保険料の払い方と納付期限で解説しています。未加入のまま放置した場合のリスクは国民健康保険に未加入だと何が起きる?をご覧ください。
まとめ
- 国民健康保険に扶養はない。加入者の人数分だけ保険料がかかる
- 納付義務者は世帯主。世帯主が国保でなくても通知は届く
- 未就学児は均等割5割軽減、産前産後は保険料免除(産前産後は届出が必要)
- 130万円の壁は2026年4月から判定方法が変更。契約上の基本収入で判断される
- 106万円の壁(賃金要件)は撤廃が決定。今後は「週20時間以上」が基準になる
- 退職時は任意継続との比較を。扶養家族が多いほど任意継続が有利になりやすい
本記事は2026年8月時点の公開情報にもとづいて作成しています。国民健康保険は市区町村が運営しており、保険料率・軽減の要件・手続きは自治体ごとに異なります。また社会保険の適用拡大は段階的に施行されるため、最新の状況は厚生労働省および勤務先・お住まいの市区町村にご確認ください。

