確定申告をすると生命保険料の一部を所得から控除できることを知っていますか?自分が入っている生命保険だけでなく、配偶者などの家族が加入している生命保険も控除の対象になる場合もあります。今回は、控除額の計算方法や要件や確定申告の手続き、そして生命保険金を受け取った時の申告についても紹介していきます。
目次
生命保険料控除とは?
所得税と住民税の負担を軽減するもの
生命保険料控除とは、支払った保険料の一部を所得から控除する制度のことで、所得税や住民税などの税金負担を抑える効果があります。2018年5月現在、一般生命保険料控除や介護保険料控除、個人年金保険料控除などがあり、保険契約した年度により控除できる金額が異なります。控除金額の計算については、後ほど説明します。
控除には生命保険料控除証明書が必要
生命保険料控除の適用を受けるには、生命保険料控除証明書が必要です。一般的には、生命保険料控除証明書は毎年10月くらいに保険会社から送付されます。証明書が無ければ控除できないため、受け取ったら大切に保管しましょう。
解約した保険も保険料控除できる
解約した生命保険でも、その年に支払った保険料であれば生命保険料控除の対象になります。ちなみに、解約返戻金が発生した場合は一時所得となることが多いですが、生命保険料控除を計算する際の支払い保険料から差し引かなくても良いことになっています。
保険料控除で確定申告が必要なケース
自営業者は確定申告で保険料を控除
会社員の場合、会社で年末調整の手続きが行われますが、自営業の場合には年末調整がありません。そのため、生命保険料の控除を受けるためには、自分で確定申告をする必要があります。
確定申告をする時に必要な書類は「確定申告書A第一表・第二表」と「生命保険料控除証明書」です。確定申告書A第一表・第二表は、国税庁のホームページでプリントアウトできます。税務署で直接取りに行くことや電話で取り寄せることもできます。
年末調整忘れなど追加で控除したい時
先ほども説明しましたが、会社員(サラリーマン)の場合、年末調整で生命保険料控除の手続きが行われます。また、給料から保険料が天引きされている場合は、生命保険料控除証明書は必要ありません。
しかし、年末調整が終わってから生命保険料を支払っていたことに気づいた場合など、年末調整までに生命保険料控除証明書を提出できない場合もあるかもしれません。この場合、確定申告をすることによって追加で生命保険料控除を受けることができます。
確定申告の際に必要な書類は「確定申告書A第一表・第二表」と「生命保険料控除証明書」と「源泉徴収票」です。源泉徴収票は会社からもらうことができます。
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生命保険料控除の計算方法とは
旧契約の場合
生命保険料控除は、所得税と住民税からそれぞれ控除されます。生命保険に入った年により、控除される上限額と控除される保険の種類が変わり、平成23年12月31日までに加入した保険のことを「旧契約」といいます。
<旧契約>所得税・生命保険料控除計算方法
年間払込保険料額 | 控除される金額 |
---|---|
25,000円以下 | 払込保険料全額が控除 |
25,000円超 50,000円以下 | (払込保険料×1/2)+ 12,500円 |
50,000円超 100,000円以下 | (払込保険料×1/4)+ 25,000円 |
100,000円 超 | 一律 50,000円 |
<旧契約>住民税・生命保険料控除の控除額の計算方法
年間払込保険料額 | 控除される金額 |
---|---|
15,000円以下 | 払込保険料全額が控除 |
15,000円超 40,000円以下 | (払込保険料×1/2)+ 7,500円 |
40,000円超 70,000円以下 | (払込保険料×1/4)+ 17,500円 |
70,000円 超 | 一律 35,000円 |
平成23年(2011年)12月31日までに入った保険は、一般の生命保険料控除と個人年金保険料控除の2つで所得税から最高10万円(住民税は7万円)まで控除されます。一般の生命保険料控除と個人年金保険料控除のそれぞれの上限は、所得税5万円(住民税は3万5000円)になっています。
新契約の場合
平成24年(2012年)1月1日以降に入った保険のことを「新契約」といいます。控除される対象となっているのは、一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除の3つです。旧契約と比べると、「介護医療保険料控除」が追加されています。
<新契約>所得税・生命保険料控除の控除額の計算方法
年間払込保険料額 | 控除される金額 |
---|---|
20,000円以下 | 払込保険料全額が控除 |
20,000円超 40,000円以下 | (払込保険料×1/2)+ 10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | (払込保険料×1/4)+ 20,000円 |
80,000円 超 | 一律 40,000円 |
<新契約>住民税・生命保険料控除の控除額の計算方法
年間払込保険料額 | 控除される金額 |
---|---|
12,000円以下 | 払込保険料全額が控除 |
12,000円超 32,000円以下 | (払込保険料×1/2)+ 6,000円 |
32,000円超 56,000円以下 | (払込保険料×1/4)+ 14,000円 |
56,000円 超 | 一律 28,000円 |
3種類の保険の合計で所得税から最高12万円(住民税は8万4000円)が控除されます。それぞれの所得税控除は最高で4万円(住民税は2万8000円)までです。
新旧2つの契約に入っている人は、所得税から控除される額は最高で12万円(住民税は8万4000円)です。この場合、旧契約のみで申告、新契約のみで申告、そして両方で申告 の3つから選択することができます。
配偶者など家族の分も控除できる?
保険金受取人の要件を確認
生命保険料控除の対象となる範囲は、「保険金の受け取りが誰になっているか」によって決まります。控除となる範囲の要件は「6親等内の血族と3親等内の姻族」となっているため、妻や家族が保険金の受取人になっている場合も、控除の対象になります。
保険契約や被保険者が誰になっているかは、生命保険料控除の対象の要件に入っていないため、控除とは関係がありません。あくまで、「保険金の受取人が妻や家族(6親等内の血族と3親等内の姻族)になっているか」が生命保険料控除の対象になるか否かを判断するポイントになります。
実際に保険料を支払っていることが必要
妻や家族の分の生命保険料を控除するためには、「保険金の受取人の要件」に加えて、実際に保険料を自身が支払っていることを証明しなければいけません。つまり、妻や家族の口座から生命保険料が引き落としされていて、そこに保険料を入金しているだけでは控除が認められない可能性があります。
控除を受けるためには、生命保険料が引き落とされている口座が自身名義の口座になっていることが必要です。もし、引き落とし口座に不備がある場合は、自身の口座に変更しましょう。
生命保険金受取時の確定申告とは
税金の区分は受取方次第
満期金や解約返戻金、生命保険金(死亡保険金)は、保険料を支払っていた保険契約者と受取人の関係により税金や所得の区分が変化します。
保険金の種類 | 契約者(保険料を支払った人) | 受取人(お金を受け取る人) | 対象になる税金 |
---|---|---|---|
解約返戻金 | A | A | 所得税 |
A | B | 贈与税 | |
満期保険金 | A | A | 所得税 |
A | B | 贈与税 |
保険金の種類 | 被保険者(保険の対象になっていた人) | 契約者(保険料を支払った人) | 受取人(お金を受け取る人) | 対象になる税金 |
---|---|---|---|---|
生命保険金(死亡保険金) | A | A | B | 相続税 |
A | B | B | 所得税 | |
A | B | C | 贈与税 |
満期や返戻金は申告が不要なことも
満期金や解約返戻金などを一括で受け取った場合は一時所得、年金形式で受け取った場合は雑所得となります。ただし、一時所得は、特別控除額が50万円まで認められておりさらに控除後の金額を2で割ったものに他の所得を足して納税額を算出します。そのため、一括で満期や返戻金などを受け取った場合でも金額によっては申告が不要なこともあります。
また、贈与税や相続税にも非課税枠がありますが、控除をしても課税対象となった場合には確定申告が必要です。
まとめ
生命保険料の控除は、保険金の受取が妻や家族になっていて自身が保険料の支払いをしている場合は、自身のみならず、妻や家族の分も対象となります。会社員は基本的には年末調整、自営業の人は確定申告時に書類を提出することで保険料の控除を受けることができます。控除される上限は、平成24年1月1日以降に加入した保険か否かで控除される金額も変わってきます。もし、不安な点があれば、加入中の保険会社に聞くか、FP(ファイナンシャルプランナー)などの専門家に相談してみてもいいかもしれません。
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