学資保険は、子供の進学に必要な資金を計画的に順備することができる保険ですが、契約の仕方や受け取り方によって税金の種類や金額が変わることを知っていますか?今回は学資保険の満期に関する税金や注意点について説明します。税額の計算方法についても解説するので試算の際の参考にしてください。
目次
学資保険は必要?絶対加入するべき?
子供の学資金を貯めるためのもの
学資保険は、子供の教育にかかる費用の確保を目的とした保険です。17歳や18歳など、大学入学時に満期を迎えるように設定されているものが多いです。
中学や高校入学など子供が教育の節目を迎える時期に祝い金を受け取れるや満期金が受け取れる商品もあります。祝い金については受け取りを据え置くこともできます。
契約者の万が一に備える機能もある
学資保険は、両親などの親族が契約者となることが多く、契約者が死亡した場合には保険料が免除される払込免除特約が付加できるものが多いです。育英年金(満期を迎えるまでの間、子供に対して毎月支給されるお金)が支払われるタイプの学資保険もあります。学資保険には学資金を貯めるだけでなく、万が一に備える機能があるともいえるでしょう。
学資保険の満期金にかかる税金の種類
契約の形態によって、学資保険の祝い金や満期金にかかる税金の種類や金額は変わります。例を交えながら、一つずつ見ていきましょう。
一括受け取りの税金は受取人による
18歳満期で学資保険の満期保険金を一括で受け取った場合、一時所得に該当します。契約者と受取人、税金の関係は以下の通りです。
契約者 | 保険金受取人 | 税金 |
---|---|---|
父 | 父 | 贈与税は発生しない (所得税が発生する可能性有り) |
父 | 子 | 贈与税発生 |
一時所得には特別控除が認められています。そのため、契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同じであれば、満期保険金と支払った保険料の差額が50万円を超えた場合にのみ所得税と住民税が課税されます。
契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同一ではない場合は、贈与とみなされます。後ほど詳しく説明しますが、1年間の贈与額が110万円以上の場合は申告して贈与税を払わなければなりません。
学資年金は雑所得になる
学資保険によっては、分割で年金形式で学資金を受け取る学資年金タイプもあります。例を挙げると、大学入学時に100万円を受け取り、以後1年ごとに50万円ずつ受け取れるものです。
学資保険を学資年金で受け取る場合、一時所得ではなく雑所得に該当します。後ほど詳しく説明しますが、雑所得は一時所得のような特別控除がないため申告の対象となる可能性があります。
学資保険満期金の所得税はいくら?
学資保険の満期金にどのくらいの税金がかかるのか、いろいろなケースについて計算してみましょう。
所得税は原則ほとんどかからない
先ほども説明しましたが、所得税は「学資保険の満期金を一時金で受け取る際に、払い込んだ保険料に対して50万円を超える利益(保険差益)が出ていた場合」に発生します。この場合、50万円を超えた分の金額に対して所得税が課税されます。しかし、保険差益が50万円を超える学資保険はあまり存在しないため、所得税がかかることもほとんどないと言えます。
満期を一時金として受け取った場合
一時所得に分類されます。この場合、次の計算式を用いて一時所得金額と課税所得を算出します。
(満期保険金 + 積立配当金)- 払込保険料総額 – 特別控除額(最高50万円)= 一時所得の金額
所得税が課税される金額 = 一時所得の金額 × 1/2
「満期保険金100万円、払込保険料総額90万円、満期保険金一括受取」の一時所得は以下のようになります。
100万円(満期金)- 90万円(払込保険料総額) – 50万円(特別控除額)= -40万円
一時所得が「0円」を下回る場合は「0」として計算されるため、この契約の満期保険金には課税されません。もし一時所得が発生していた場合、一時所得の1/2に相当する金額が課税対象になります。
学資保険の祝い金(一時金)を据え置く場合、実際に祝い金を受け取った時ではなく祝い金の支払いを迎えた時に課税されます。保険金を据え置いたとしても、支払い期日を迎えた契約に関しては、その年の一時所得として申告が必要な場合があります。解約した場合に契約者が受け取る解約返戻金についても、所得税(一時所得)の対象です。
満期保険金を年金形式で受け取った場合
「雑所得」に分類されます。計算式は以下の通りです。
雑所得 = 分割した保険金額 -(分割した保険金額 × 払込保険料総額 / 総支給見込額)
「満期保険金400万円、払込保険料総額360万円、満期保険金を年額100万円 × 4回に分けて受け取った」場合の雑所得を計算してみましょう。
100万円(分割した保険金額)-(100万円 × 360万円(払込保険料総額)/ 400万円(総支給見込額)= 10万円(1年分の課税対象金額)
雑所得には一時所得のような特別控除がないため、算出された10万円が課税対象になります。また、保険金を分割で受け取っている期間中は毎年課税されるため、今回のケースでは「10万円 × 4回」が対象です。
ただし、会社員などが契約者で、給与所得と退職所得以外の収入が年間20万円以下かつ保険金以外の雑所得がない場合には、非課税とすることが認められています。そのため今回の場合では他に雑所得がなければ課税されることはありません。一方、個人で事業を行っている人にはこのような非課税枠が設けられていないため、雑所得10万円に対し、収入に見合った税率を乗じて税額を算出します。
学資保険満期の贈与税はいくら?
贈与税の金額は受取人によって変わる
先ほども説明しましたが、学資保険金の受取人が保険料負担者でない場合の保険金は「贈与税」の対象になります。ただし、1年間の贈与額が110万円以下であれば申告の必要はありません。
贈与税の税率は以下のとおりです。控除額がある場合は、税率を乗じたあとの金額から差し引きます。
■祖父母・父母など(直系尊属)から、贈与を受ける年の1月1日に20歳以上に到達している子や孫へ贈与を行った場合の税率
【特例贈与財産用】(特例税率)
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ‐ |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
■「特例贈与財産用」に該当しない場合の税率(例えば「夫婦間・兄弟間・親(祖父母)から未成年の子供への贈与」など)
【一般贈与財産用】(一般税率)
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ‐ |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
贈与税の計算式と具体例
贈与税額は次の計算式で算出します。
(満期保険金 + 積立配当金 – 基礎控除110万円)× 贈与税の税率 = 贈与税額
「満期保険金200万円・契約者(保険料負担者)= 父・保険金受取人 = 子供(未成年)」である場合の贈与税額を、先ほど説明した税率の表を用いて計算すると以下のようになります。
(200万円(満期保険金) – 110万円(基礎控除))× 10%(贈与税の税率) = 9万円(贈与税額)
税金控除など有効な税金対策はあるの?
契約者と受取人を同一人物に指定する
先ほどの計算例の通り、保険金受取人を契約者(保険料負担者)にしておくと満期保険金(一時所得)に対する税負担をしなくてすむケースが多いと分かりました。保険金受取人を契約者以外にすると贈与税が発生します。節税を考えるなら、保険料を支払う契約者と、保険金を受け取る受取人が同一にしておくと良いでしょう。
大型の学資保険は分割契約に
高額の満期保険金は、所得税が発生してしまうことがあります。「満期保険金1,000万円・払込保険料総額850万円・契約者(保険料負担者)= 父、満期保険金受取人 = 父、一括受取」の場合で、所得税の計算をしてみましょう。
1,000万円(満期金)- 850万円(払込保険料総額) – 50万円(特別控除額)= 100万円(一時所得)
100万円(一時所得の金額)× 1/2 = 50万円(所得税が課税される金額)
50万円(課税対象金額) × 収入に応じた税率 = 所得税
この場合の対策としては、契約を複数に分け、満期を迎えるタイミングをずらすことが挙げられます。保険金の合計額は同じでも、保険差益(満期保険金 – 払込保険料総額)を50万円以内に抑える形にし、かつ受け取る年が異なる契約を複数保有することが節税につながります。高額な学資保険を検討している人は、分割契約も視野にいれることをおすすめします。
確定申告や年末調整で生命保険料控除
学資保険の保険料は「生命保険料控除」の対象になります。その年に払い込んだ保険料に応じた控除額を所得から差し引くことができるため、忘れずに申告しましょう。
自営業などの個人事業主は確定申告書で控除の申告を行い、会社員は年末調整で申告します。毎年10月以降に保険会社から送付される「生命保険料控除証明書」を申告書に添えて提出しましょう。保険料が給与から天引きされている場合、生命保険料控除は発行されません。
祖父母が孫の学資保険を契約できる??
複数の条件をクリアすれば可能
学資保険は、子供の教育資金を貯めるための商品です。保険会社によっては契約者に様々な条件が設定されていることが多く、祖父母が契約者になるには条件をクリアする必要があります。
例えば、契約者が死亡した場合に払込免除が認められている学資保険では、契約者の健康状態や年齢に一定の条件が設けられているものが多いです。祖父母の年齢や健康状態によっては契約者になれないかもしれません。孫と祖父母が同居してなければ契約者になれない保険会社や、親権者の同意が必要な保険会社もあります。
贈与とみなされる可能性が高い
祖父母が学資保険の契約者になり、受取人を子、あるいは孫にした場合は贈与になる可能性が高いです。祖父母が学資保険を契約する場合は、基礎控除の110万円も視野にいれておくと良いでしょう。
また、受取人である子や孫の同意なしに祖父母の意思で学資保険を契約すると様々なトラブルを引き起こす可能性が高いです。きちんと話し合ってから契約することをおすすめします。
まとめ
学資保険を契約する際には、学資金の額だけでなく誰を受取人にするかが重要です。受取人変更の手続きは、保険会社に連絡をすれば行うことができます。もし、保険金受取に関して疑問や不安が残るようであれば、一度保障内容の確認や見直しをしてはいかがでしょうか。
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