ドル建て終身保険という言葉を聞いたことがありますか?ドル建て終身保険をはじめとする外貨建て保険は、保険料の積み立てを円ではなく外貨で行うものです。今回は、ドル建て終身保険のメリットとデメリット、そしてドル建て終身保険のリスクを避けるために知っておきたいことについて解説します。
目次
ドル建て終身保険とは
ドルをベースにした外貨建て保険
米ドルや豪ドルなどのドル(外貨)で積立金を運用する終身保険です。ドルで運用するからといって海外の保険会社の保険に加入するわけではなく、日本の保険会社が販売しているものです。外貨建ての保険には、個人年金保険や養老保険もあります。
ドルの市場金利に合わせた予定利率
ドル建て終身保険は、ドルを通貨として使用している国の市場金利に連動して予定利率を設定しています。日本の生命保険よりも比較的高い予定利率が設定されていることが、ドル建て終身保険の特徴の一つとなっています。予定利率とは、保険会社が契約者に約束した利率のことで、保険料を決める際の要件の一つです。
予定利率は経済情勢に応じて定期的に見直されます。もしも、市場金利の水準が保険契約を結んだ時よりも下回った場合、本来であれば市場金利に連動して予定利率も下がります。しかし、契約者保護の観点から予定利率には「最低保障」を設けているものが多いです。
ドル建て終身保険と税金
ドル建て終身保険の保険料は、日本の生命保険契約と同じように「生命保険料控除」の対象です。生命保険会社が発行・送付する「生命保険料控除証明書」で控除を行いましょう。
円建ての生命保険の場合は、12月までの年間払込保険料(見込み額)が明記されています。しかし、ドル建ての保険料を月払いしている場合は、年間払込保険料(見込み額)が記載されていません。これは12月の保険料レートが確定していないためで、レート確定後に年間払込保険料が明記された証明証が発行・送付される仕組みになっています。
もし、契約期間途中でドル建て終身保険解約した場合には「解約返戻金」が保険会社から支払われます。解約返戻金から、払込保険料総額を差し引いた残額が50万を超える場合は「一時所得」として確定申告が必要です。
保険料を一時払いした契約を5年以内に解約した場合は「金融類似商品」に該当します。その場合、払込保険料と解約返戻金の間に差益が発生しているようであれば、差益に対して20%(所得税15%、住民税5%)が源泉徴収されるため確定申告は不要です。
契約者と被保険者が同一で、被保険者の死亡時に支払われる死亡保険金は、相続税の課税対象になります。死亡保険金を円に換算するタイミングや方法などは、各商品の契約内容をしっかりと確認しましょう。
ドル建て終身保険のメリット
予定利率が高く、保険料が安い
保険会社は保険料の一部を、将来支払う保険金として積み立てています。このお金を責任準備金といいます。
責任準備金は、さまざまな投資先で運用され、保険会社はそこで得られる運用利益をあらかじめ想定し(予定利率)、予定利率分を保険料から割り引いています。そのため、同じ保障内容でも予定利率が高いほど保険料は安くなり、予定利率が低いと保険料は高くなります。先ほども説明しましたが、ドル建て終身保険は日本の生命保険の予定利率よりも高く設定されていることが多いため、メリットといえます。
ちなみに、もし保険会社の想定を下回る運用結果になったとしても、契約時の予定利率が引き下げられることはありません。
契約時より円安で為替差益が得られる
円安とは他の国の通貨に対して、円の価値が下がることです。例えば1ドル=100円が、1ドル=120円になった場合に円安になったといいます。
ドル建て終身保険が円安で為替差益が得られる理由について、例を挙げて説明しましょう。契約時に3,000ドルを支払い、解約して3,000ドル戻ってきたとします。
契約時の為替レートが1ドル=100円で、解約時のレートが1ドル=120円だとした場合、契約時の30万円の支払いが、解約時には36万円で戻ってくることになります。この6万円が「為替差益」です。支払った保険料と受け取った返戻金が同じでも、ドル建て終身保険は為替の変動によってメリットが得られることがあります。
ドルへの分散投資ができる
分散投資とは、投資先を分散させることで運用リスクを軽減させる手法です。一つの投資先にすべての資産を投資した場合、運用先の状況によっては、資産が大きく減ってしまったり、資産のほとんどを失ってしまったりすることがあります。このような危険性(リスク)を回避するための手法の一つとなっているのが「分散投資」です。
日本の金利が低迷していても、運用通貨の金利が高い水準を維持していれば、外貨にも資産を分散した方が良い結果をもたらすこともあります。
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ドル建て終身保険のデメリット
為替手数料がかかる
ドル建て終身保険の保険料を払い込む時には為替手数料(円をドルに換える手数料)がかかります。また、保険会社から支払われる保険金や解約返戻金にも為替手数料(ドルを円に換える手数料)が必要です。保険契約に関する為替手数料と保険料を支払う際の手数料と保険金を受け取る際の手数料は、保険会社によって異なります。
ドル建て終身保険は円建ての終身保険よりも高い金利が設定されていますが、その都度かかる為替手数料を含めて考えると、実質の金利は下がります。目先の利率だけではなく、いろいろな角度から商品の内容を確認し、契約内容をしっかりと把握しましょう。
契約時より円安でもリスク有り
前項の「メリット」の部分で、「円安」によって「為替差益」を得られる可能性について触れましたが、その一方で、「円安」がデメリットになるケースがあります。
例えば、毎月の保険料が100ドルだったとします。レートが1ドル=100円の時の保険料は1万円ですが、レートが1ドル=120円に変わると保険料は12,000円になり、払い込む保険料が2,000円も上がってしまいます。このような状態のことを「為替差損」といい、外貨建ての金融商品特有のリスクとなっています。
解約のタイミングが難しい
ドル建て終身保険は、円安や円高など解約のタイミングによって受け取れる金額が変化します。そのため、いつなら多く返戻金を受け取れるかを見極める必要があり、解約のタイミングが難しいというデメリットがあります。
また、将来に何が起こるかはだれにもわからないものです。当面大きな出費がないと思っていた場合でも、突然お金が必要になり元本が割れた状態で解約することがあるかもしれません。解約のタイミングによって受け取れる金額が変動することは、ドル建て終身保険のデメリットともいえます。
ドル建て終身保険加入の注意点とは?
元本割れなどのリスクをきちんと確認
デメリットの項でも解説しましたが、ドル建て終身保険は、元本割れする可能性がある商品です。また、為替手数料も発生します。
利率だけで加入を決めるのではなく、リスクをきちんと調べて納得した上で加入しましょう。また、教育資金などの使途が決まっているお金ではなく剰余資金で行うことをおすすめします。
為替リスクを避けるなら一括は避ける
メリットとデメリットでも説明しましたが、ドル建て終身保険は為替変動のリスクを受けやすい商品です。そのため、加入時に一括払いで保険料を納めると加入後に世界情勢が大きく変わった場合に、大きく資産が減る可能性もあります。できるだけ為替変動のリスクを避けたいのであれば、一時払いなどの一括で払うことを避けて月払いで保険料を納めると良いかもしれません。
まとめ
ドル建て終身保険についての理解は深まりましたか?ドル建てをはじめとする外貨建て保険はリスクを伴います。確実に保険金を受け取りたい人や、契約内容をしっかりと把握できない人には不向きの保険かもしれません。剰余資金の運用や分散投資に興味がある人は、経済情勢を見ながら検討してはいかがでしょうか。また、加入する際には複数の保険商品を比較検討することをおすすめします。
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